24 引きこもりの賢者は、今日もゲームを攻略していく
目下、49問が終わった。
危ない所も有ったけど、全員で協力し合ってここまで来た。
ライバルと呼べる相手も、既にもう一組だけだ。
46問目あたりから、うちとあちらの一騎打ちの様相を呈している。
『凄いねえ。じゃあこれが最終問題だぴょん』
ピエロの声に、緊張が走る。
順位をどう決めるかはともかくとして、これで最後となれば気合も入るんだろうな。
相手チームも中々覚悟の決まった顔をしてるよ。
うちは全部で五人。全員が正解したら、三位以内は入れる確率が高い。
そして、うちのチームの中の誰かが三位になったら、賞品を交換してくれるというのは事前に約束してあるのだ。レア本は私のもの。
つまり、ここで正解したら全てが大団円。
『『ネオフロンティア』のラスボスは、ドラゴンである。〇か×か』
ピエロが大げさに天を仰ぎながら、問題を口にする。
「これははっきり、分からんぞ。ってか、分かる奴は制作のトップだけじゃね?」
「だな」
このゲームの最後のボスをどう設計しているのか。
そんなことを知っているのは、制作スタッフだけなのは当たり前。
「最後の最後で、運ゲーってことか……」
「あのピエロ、殴れるもんなら一発殴ってやりたい。あの笑いにむかっ腹が立つ。俺たちが右往左往してるの見て、楽しんでやがる」
「おう、なら俺は一発魔法をぶち当ててやるか」
今でも楽しそうにケラケラとしている道化師が、腹立たしいというのは分かる。
私たちの困っている様子が、楽しくて仕方ないと笑っているのだから。
あれ、絶対性格悪いと思う。
「なら、どうせ最後だっていうし、半分で分かれないか?」
「どういうことだリーダー」
「今までずっとパーティーで居たが……よく考えたら別にパーティー全員が同じ答えにしなければならない決まりは無い。半々に分かれて答えたら、百パーセントどっちかが当たるだろ」
「なるほど。リーダー天才」
「ははは」
ダイの言葉に、ケイオスさんが賛同。ジョージとミカエルさんも同意する。
「じゃあ、前衛は〇、後衛は×だ。それで分かれて、恨みっこなし。それでいこう。運試しだ」
「じゃあ、カレンちゃんが当たりそうだね。運極だし」
私は多分後衛だから、ダイとケイオスさんとは分かれることになるか。
「うへえ、でも、こういうのはリアルラックも大事だ。カレン、勝負だ」
「あんたら……本当におバカね」
最後の最後まで楽しそうにしている我がパーティー。
本当に、このイベントを楽しんでたんだな。
じゃあ、私は×に移動しよう。
ライバルチームも、私たちの動きを見て二手に分かれることにしたらしい。
まあ、そうすればどっちかは必ず当たるもんね。
『それじゃあいいかい? 残り五秒、4,3,2』
カウントダウンが進む。
その時。
私は見た。
ピエロが、僅かに緊張しているのを。動きが一瞬、固まったのを。
なんだ、嫌な予感がする。
違う。何かが違う。考えろ。何がおかしい。
ラスボス。ドラゴン。制作陣しか答えを知らない。
いや、そうじゃない。
これの答えは。
『そこまでぇぇぇ!! 正解は……『どちらでも無い』だああああぁぁ!!』
「な!? そんなの有りかよ!!」
「ふざけんな!!」
怒りに満ちた怒号があがる。
うちのパーティーメンバーも、いきり立って抗議している。
最後の最後で、とんでもない落とし穴を用意してやがったな、道化師は。
『我が『ネオフロンティア』は、果て亡き物語。終わりなく続く、もう一つの人生。君たちにとって最後になるボスがドラゴンであるかどうか。それは、誰にも分からない。そう!! それが!! ネオフロンティア!!』
ピエロが、快哉をあげる。
『そして正解者は……たった一人!! さあ、こちらへ』
ピエロの言葉と共に、たった一人が一番目立つ場所に転移させられる。
それは、誰あろう。良く知った人物。
『第一回大規模イベント第一位。それは彼女。『【賢者】カレン』だあああああ!!』
そう、私である。
最後のカウントダウンの瞬間。私は咄嗟に〇でも×でもないエリアに飛び出していたのだ。考えてのことでは無く、反射に近かった。
あとごめん。
称号も含めて名前を強制的に表示させられた。全観客に向けて。全プレイヤーに向けて。
やっぱり、道化師殴るの、私がやっていい?
その日、ゲーム内で新たな有名人が生まれた。
引きこもりの賢者は、今日もゲームを攻略していく。
これにて第一章結。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
引き続き書き進めていこうと思いますが、次回の更新までは少し間があくでしょう。
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