22 イベント開始したっぽいよ
日も変わり、イベントの開始まであと数分という頃合い。
私は、ダイちゃんパーティーに囲まれていた。というより、連行されてここにいる。
斥候役の人が今日も間が悪くて不参加ってことで、代わりにお前と無理矢理引っ張られた。
まあ良いんだけどね。イベント参加するにしても、どうせ私はコバンザメになるしかないから。
「いよいよだな。カレンちゃんも俺たちが守るから、大船に乗った気でいてくれ」
ケイオスさんは相変わらず格好いいな。
俺たちが守るって言葉がすらっと出てきてるあたり、ナチュラルに好青年なんだろう。
これはきっと、リアルでもモテてるに違いないよ。これがゲームじゃなけりゃあなあ。残念だわ。
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「うん、大丈夫。ダイもいるし、俺たちなら入賞間違いなしさ」
「うへへへ、一位になったら、うへへへへ。うへ、うへへへへ」
一位になった時を妄想しているのか。
ジョージ三世さんが物凄くだらしない顔になってる。
まあ、私が合流するなり、これは運命だよ、とか言い出したことに比べれば、まだマシか。
気持ち悪……ちょっと独特な顔になってるのはともかく、一位になった時を想像しているのはみんな同じなんだろうな。他の面々も大なり小なり賞品や順位について語り合っている。
そうそう、今いるのは街の噴水付近。
周りに大勢の人が居る。
ダイ曰く、こういうイベントの時は初期ポジが大事、だそうだ。戦いは既に始まっている、とかどや顔で言ってた。
知らんがな。
私は戦いには役立たないと思うから、全力で隠れるからね。なんならダイちゃんを盾と囮と犠牲にして、生き残る。大逃げのカレンちゃんとは私のことだ。
『レィディ~スア~ンドジェントルメ~ン。どうも、皆さんこんにちはこんばんはおはようございます。わたくし、司会進行実況解説迅速丁寧拉麺一丁、GMの道化師、ジョーカー松本でぇぇす』
イベント開始時間になったと同時に、イベント参加希望者が転移した。
ちなみに、参加は事前登録型。予め参加の意思表明を設定からしておくことで、イベントに参加が出来る。尚、参加しなくてもいいらしい。観客登録ってのもあるので、見るだけでも楽しめるもの、なのだそうだ。
観客でも良かったんだけどな。
『これより、ネオフロンティアで初めての大規模イベントを開催いたしまああああああああす!!』
鼓膜が破れそうなほどの勢いで、アナウンスが流れる。
転移された場所は、コロシアムのような場所だった。
地面がむき出しの広場のような場所を、観客席が囲っている。
あ、今気づいた。
観客席に、人が居る。
結構大勢いるのは何だろう。観客登録した人があんなにいたってことなのかな。
『最終確認です。これよりイベント参加の意思を確認するダイアログが表示されます。参加する方は同意してください。ここにきて、この期に及んで今更同意しないとぬかす方は、観客席に転送されます。折角のイベントに参加しなかったやつらと一緒に、大人しくけんがくしてやがれ下さい』
滅茶苦茶な日本語を使ってるアナウンスだと思っていたが、よく見るとこのコロシアムの向こう正面の高い所で、どう見ても道化師な格好してる人が居た。あれがジョーカー……ジョーカーなんとかさんだろう。
原色でカラフルな上に左右で模様も色も違う服を着て、ド派手なメイクして、目立ってるなあ。ピエロじゃん。
参加者より、あの人の方が目立ってないかな。
と思っていたら、目の前に半透明の画面が出てきた。
『最終確認 イベントに参加しますか YES/NO』
勿論YESだが、一呼吸深呼吸してから同意した。
これから何が始まるのか、分からない状況で同意するのも勇気がいるのよ。
『すばぁぁぁるぁぁぁしいぃぃぃ!! ここに集まった全員が参加ですね。よろしい。同意もとれたことですし、これよりイベントを始めましょう』
いよいよ始まる、ということで、周りが少しざわつき始めた。
一体どんなイベントが始まるのか。
「カレン、一応俺らの側に寄っとけ」
「カレンちゃん囲んで円陣組んでおくか。背中合わせにして四方を警戒だ」
「おう」
何が有るか分からないからと、私の周りに野郎が固まった。
前にダイちゃん、後ろにケイオスさん、右にジョージさん、左にミカエルさんだ。全員背中しか見えないけど、辺りを警戒しているのが分かる。
空気がピリつき始めた。
『イベントはズバリ!! 〇×くいぃぃぃぃぃず!!』
……。
…………。
はい?
ピエロの一言で、会場の地面に〇と×の字が現れた。