16 目標は三階
ダンジョン。
それはこのゲームにおいては基本となる場所。
モンスターが何処からとなく湧いて出てきて、人を襲う。
時折モンスターがダンジョンの外にまろび出てくることが有る為ダンジョンの周囲は厳重に囲われていて、ダンジョンの中に入ってモンスターを倒すのは間引きになるので推奨されている。らしい。
この町は、初心者向けのダンジョンが一つだけ。というより、そういう場所だから町が作られたとも言える。
ダンジョンは厄介であると同時に、多くの資源を産出する場所でもあるからだ。
この町の歴史について書かれていた本を読んだ私は知っている。ここのダンジョンは、国内において最も難易度が低い場所であるということを。
「ここがダンジョン……」
「あまりぃ、きょろきょろすると危ないわよぉ」
「はい、気を付けます。ご忠告ありがとうございます」
「うふふぅ、お姉さんだから当然よぉ」
もにかさんがお姉さん風をびゅんびゅんに吹かせてきた。いいのかなお姉さん。私は甘えられる人にはとことん甘えるぞ。齧れる脛は齧り倒すし、頼りになる人には遠慮なく頼るのがカレンという女だからね。よし、もにか姉さん、お願いします。
ダンジョンの中は、石畳がある地下水道のような人工的な感じだった。
水は無いけど、何となくジメっとしてる気はする。
真っ暗だし、数メートルも先になるともう何も見えない。
『ライト』
もにか姉さんが、一言発すると周囲が明るくなった。
「これは?」
「わたしのぉ、魔法。光魔法のスキルを、最初に取っておいたのよぉ」
このゲームでは、最初にスキルポイントが5ポイント貰えた。それでスキルを選び、自分なりのスタイルでゲームを攻略しましょうって感じだったかな。あとは、レベルアップ毎に1ポイントのスキルポイントが貰える。
最初に選べるスキルは、レアで強いものほどポイントが高い。
私がスタート後に本で知った限りだと、光魔法は5ポイントを丸々使わないと駄目だったはず。
火魔法、水魔法、風魔法、土魔法……とか、色々ある中の光魔法。対になるのが闇魔法だったかな。
つまり、もにか姉さんは最初から魔法使いになる気満々でゲームをプレイし始めたってことだ。
なかなか攻略よりな考え方なのだろう。しかし、ひとつ気になる。
「光魔法って、確か序盤は物凄く苦労するって、本に書いてましたけど」
「そうなのぉ。光魔法はぁ、スキルのレベルが上がるまでぇ、攻撃とか全然出来ないからぁ。今はぁ攻撃も出来るようにぃ、なったのぉ。だからぁ、ダンジョンにも挑戦してみよぅってことにぃなったのよぉ」
私の優れた記憶力によれば、光魔法は光源になるライト、複数の光源になるマルチライト、強めの目くらましが出来るフラッシュ、なんかの順番で覚えていくはず。
攻撃系がスキルレベル……十だったか十五だったか。それぐらいのライトボールまで覚えられないんだった……気がする。あれ、フラッシュボールだったっけ。まあ、そんな感じだったはずだ。うん、多分あってる。
流石私の記憶力。
スキルは使いまくってるとスキルのレベルが上がるんだよね、確か。
「あーしらは、リアルでも知り合いでさ。お互い、最初っから組むつもりでキャラメイキングとビルド組んでんだよね」
「へえ。元々お知り合いだったんですか」
「知り合いってか、高校時代からのダチだよ」
「なるほど」
高校時代の友達は一生ものって言うしな。
大人になっても交友が続くってのは、とても羨ましいことだと思う。
まてよ、ということはリカさんのあれが生年月日としたら、みんな同い年で……うん、これは止めておくか。深く考えるとドツボにハマって失礼かましてしまいそう。
しかし、ゲームで遊ぶ、昔からの友達か。なんかいいな。
私も友達がいない訳じゃないけど、こうしてゲームを一緒に遊べる友達ってなるといないし。
あ、一人居た。馬鹿が。あれは高校時代の友達って言うか、保育園からの腐れ縁だからノーカンだね。
「じゃあ、まずは一階から。目標は三階だよ。そこに目的の夢見草が生えているらしいから」
「はい」