13 振り出しにもどる
ここ……最初のスタート地点じゃないかな。
いつの間にか、私は隣の町の図書館から、最初の街の噴水まで戻っていた。
何が起きたのか。
え、どういうこと。何で私こんなところにいるの。まだ見てない本たちはどこ。
考えてみるが、何もわからない。
しかし、スタート地点に戻っているのは事実。
私、トレーズの図書館に居たはずなのに。
原因不明。
こうなったら、あいつに頼るっきゃない。
『ダイちゃん、助けて』
『どした?』
助けて、ダイえも~ん。
かくかくしかじかと、今起きたことを説明する。
すると、通話の先で幼馴染が爆笑しだした。
『あぁ、そりゃEPがゼロになって、HPを侵食されて死に戻ったな』
『……何語?』
『日本語だよ!!』
ダイの説明によれば。
キャラクターにはEPという数字が存在していて、MAXが百で固定。時間経過や、スキルの使用で減っていくものだそうだ。
走ったりしても減る。
それで、このEPがゼロになるとHPが減り始める。HPがゼロになれば、当然ペナルティだ。
EPを回復する手段は、基本的には飲食になる。物を食べたり飲んだりすれば、EPが回復する。回復量は飲食したものによりけりだが、最低でも一日一食は食べた方が良いとのこと。
私、そんなの知らなかったよ。
食べ物食べたのなんて、差し入れの肉ぐらいだもん。
そもそも図書館内は休憩スペース以外での飲食は禁止って怒られたし。あそこでものを食べるって発想は出てこないって。
『ま、ようするに、空腹でぶっ倒れたってことだ』
『なるほど!!』
分かりやすい。
EPがゼロになるってのは、ああいう感じなのか。初めて知った。
『これに懲りたら、あまり引きこもりっぱなしになるんじゃないぞ~』
『それは約束できないな』
『なんでだよ!?』
引きこもって読書してたら、食事を忘れるってこと、よくあるもの。
特に、面白い小説を読んでる時。最高に面白い小説って、読んでるとすぐに時間がたっちゃうのよ。気づけばお昼ご飯食べ損ねてたとか、しょっちゅうあるし。他の人も似たようなことは有るはずだよ。無い方がおかしいよ。
つまり引きこもらないという選択肢も無い以上、迂闊な約束は出来ません。残念ながら。
当方、絶賛引きこもり宣言中です。
『取りあえず、助かったわ。ありがとね』
『おう。困ったときはいつでも頼って来いよ』
相も変わらず、人を助けることに躊躇の無いやつ。お陰であの妙な現象の謎も解けたし、今後どうすれば良いかも分かった。
助かったのは事実なので、素直に感謝しておく。
さんきゅう、マイフレンド。君は良いやつだった。過去形で語らねばならないのが残念だよ。
「取りあえず、ご飯を食べればEPが回復して、HPも減らなくなるわけか」
最初にやることは、食べ物の買いだめだな。
携帯食料みたいなのをいっぱい買っておいて。
あと、飲み物も折角なら買いだめしておこう。休憩スペースも分かっているし、あそこなら飲食可だな。本の持ち込みは駄目らしいけど、ささっと食べてささっと戻れば本は読み放題。
「結局、まだ読めてない本もあったのに。もう一度隣町に行くなら……転移か」
転移の登録をしておくと、町から町の移動が簡単になるとは教わった。
この街の教会にも行ってみるか。