表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ある侍女へのインタビュー

私が仕えていた王女様は、それはそれは病弱でいらして――かのお方の人間関係は、王族にしてはひどく限られていたと記憶しております。

ただ、ひとり特に信を置いていた騎士がおりました。

彼女ですか? ええ、結局ご結婚はなさらず、ずっと王女様のお傍に仕えていらっしゃいました。忠義の篤い方――そう呼ぶのがふさわしいでしょう。

けれど時折、お二人からは独特の通じ合う雰囲気が漂っていたのです。それだけ王女様が彼女に心を許していたのか……今となっては分かりませんが。


王女様ですか。

ええ、お美しい方でしたよ。病弱でいらしたがゆえに、その儚げなお姿は、か弱い印象をいっそう助長していたのでしょう。

ただ……そうですね。どこかお寂しそうなご様子でいらっしゃったかしら。長い時間を寝台の上でお過ごしでしたから。


もちろん、お加減の良いときには、騎士や私どもを伴って庭を散策されることもありました。その折には、私どもは四阿を整えたり、お茶の用意をしたりと大忙しでございました。

いつも王女様の隣には、あの騎士の姿がございました。王女様をお守りするのが彼女の務めですからね。……さあ、何をお話しされていたのか、私どもには分かりません。ただ、あのひとときのお二人は、ひどく幸せそうに見えたものです。


ええ、お二人とも、本当に幸せそうでしたよ。……ただ、私は少しだけ心残りがございます。

あのとき私が、お二人の「想い」にもっと早く気づいていれば……。

そうすれば、王女様は今もきっと――いえ、なんでもありません。お忘れ下さいませ。


侍女はそこで言葉を切り、静かに目を伏せた。

僕は婚約者であった王女のことなど、釣書に記された内容しか知らなかったし、知り得なかった。


――何故なら、彼女は僕との婚約後まもなく亡くなってしまったからだ。


そして今、初めて気づく。

彼女は、僕との結婚を望んでいなかったのだと――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ