ある侍女へのインタビュー
私が仕えていた王女様は、それはそれは病弱でいらして――かのお方の人間関係は、王族にしてはひどく限られていたと記憶しております。
ただ、ひとり特に信を置いていた騎士がおりました。
彼女ですか? ええ、結局ご結婚はなさらず、ずっと王女様のお傍に仕えていらっしゃいました。忠義の篤い方――そう呼ぶのがふさわしいでしょう。
けれど時折、お二人からは独特の通じ合う雰囲気が漂っていたのです。それだけ王女様が彼女に心を許していたのか……今となっては分かりませんが。
王女様ですか。
ええ、お美しい方でしたよ。病弱でいらしたがゆえに、その儚げなお姿は、か弱い印象をいっそう助長していたのでしょう。
ただ……そうですね。どこかお寂しそうなご様子でいらっしゃったかしら。長い時間を寝台の上でお過ごしでしたから。
もちろん、お加減の良いときには、騎士や私どもを伴って庭を散策されることもありました。その折には、私どもは四阿を整えたり、お茶の用意をしたりと大忙しでございました。
いつも王女様の隣には、あの騎士の姿がございました。王女様をお守りするのが彼女の務めですからね。……さあ、何をお話しされていたのか、私どもには分かりません。ただ、あのひとときのお二人は、ひどく幸せそうに見えたものです。
ええ、お二人とも、本当に幸せそうでしたよ。……ただ、私は少しだけ心残りがございます。
あのとき私が、お二人の「想い」にもっと早く気づいていれば……。
そうすれば、王女様は今もきっと――いえ、なんでもありません。お忘れ下さいませ。
侍女はそこで言葉を切り、静かに目を伏せた。
僕は婚約者であった王女のことなど、釣書に記された内容しか知らなかったし、知り得なかった。
――何故なら、彼女は僕との婚約後まもなく亡くなってしまったからだ。
そして今、初めて気づく。
彼女は、僕との結婚を望んでいなかったのだと――。




