95【彩】その頃、彩乃は
校長の勧めで、ひーくんが普段からやっているという“対策”について私にも話してくれた。まだ全部を理解できたわけじゃないけど、彼のお願いならとりあえず受け入れることにした私は――
「う、うん……。ひーくんがそこまで言うなら」
「ありがとな。――で、本題はここからなんだけど……まあ、その作者ITIRiNって俺なんだわ」
「………え?」
(……え? 今なんて?)
去年の6月下旬に少し調べたことがある。1巻が発売されたときから既に話題で、新刊が出るたびに人気はうなぎ登り。その勢いは衰えることを知らない――そんなことが書かれていたはず。
その作者が、ひーくん。
(頭では理解できるのに、心が追いつかない……!)
自分の知っている「小説の情報」と、ひーくんから語られた「現実」が結びつかず、頭が真っ白になる。パニックで口を開いたそのとき――
「だっ、だってこの小説って――」
「おっと、これ以上は駄目だよ佐々木君」
校長が私の言葉を遮り、静かに声を落とした。雰囲気が一気に変わる。
「そして私はここで一つ、君に忠告をしておこう」
(あ……そうだ。ひーくんとの約束……)
「イチはまだ高校生。心身ともに未熟な状態でありながら、一人の小説家として現代社会で戦っている。それがどれほど大変なことか。なぜ彼が、我々にこの件について触れないようお願いしているのか――一度しっかり考えるんだ。今後彼と付き合っていくのなら、なおさらね」
「………はい」




