91【陽】チョコより甘い“二人の秘密”
(……よくよく考えたら、なんで俺がバレンタインデーに告白してんだ? まあ、バレンタインデーなんてお菓子業界の陰謀なんだから、どっちから言うとかはどうでもいい。むしろ今の俺はアイツらに感謝すべきなのか?)
なんて真面目に考えていたら、彩乃がお弁当袋にも使えそうな、おしゃれな保冷バッグを差し出してきた。
「はい。これ、私からのチョコレート。中身は生チョコ。さっきまで校長室の冷蔵庫で冷やしてたし、保冷剤も入れてあるからしばらくは大丈夫。でも早めに食べるか、家の冷蔵庫に入れてね」
「生チョコ⁉ 食べる食べる! 今日全部食べる!」
「球技大会の日に“生菓子が好き”って言ってたから作ってみたんだけど……そこまで喜ばれるとは思わなかったよ。でも、食べすぎは体に良くないから二日に分けて食べな? ね?」
(……それは無理だな。ってことで話を逸らそう)
「いらないってわけじゃないんだけど、彩乃から貰ったやつがあるからこれ、あげるわ」
そう言って、担当編集さんからもらったチョコをそのまま渡すと――
「………これ、袋からして絶対高いやつじゃん。……誰にもらったの?」
「誰って、仕事関係の人。……まあ全部話しておいたほうがいいか。ここじゃアレだから、校長室に行こうぜ」
「えっ……。学校にも内緒にしてることを、そんな簡単に教えちゃっていいの?」
「別に俺の秘密を彩乃が誰かに話したところで、せいぜい俺が退学になって、個人情報が世界中にばら撒かれるくらいだ。……まあその時は彩乃のも一緒に拡散されることになるけどな」
「全然よくないんですけど⁉」
「はははっ。だったら内緒にしといてくれ」
(……まあ、そんなことをする可能性のある相手と付き合ったりはしないし、俺が好きになることもないけどな)
そう考えながら、気付けば自然と握っていた彩乃の手をそのままに――俺は校長室へと足を踏み入れた。




