85【陽】既読スタンプとメリーさんの罠
実際に座るまでは延々と文句を垂れていたものの、グランクラスの座席に腰を下ろした瞬間――世界最速レベルの手のひら返しを披露した私、一之瀬陽太。
そして出発までの数分間、駅名標の写真を撮っては悩んで消してを繰り返していた。
(個人的には、相手が「あとどれくらいで着くか」分からない状況って結構心配になるから、定期的に居場所を教えてほしい派なんだけど……人によってはウザいって思うよなぁ)
(しかも俺と彩乃って、普通に喋れるくらいには仲がいい。でも心配してくれるほど仲がいいのかと聞かれれば、そこまでの自信は……ない)
(というか、彩乃の言う”用事”ってなんだよ?)
『ご案内いたします。この電車は、はやぶさ――』
(……あーもう、送っちゃえ!)
そう決めた俺は、発車直前に駅名標をパシャッと撮影。
『今俺が乗ってる新幹線が出発した』と送ると――すぐ既読が付き、OKスタンプが一つ返ってきた。
(これは「いちいち報告すんな」って意味でスタンプ一個なのか? それとも先生が来て返信できなかっただけか? いや単純にノリで押しただけか……。童○高校生には難しすぎますよ彩乃さん)
(会話を繋げてくれてれば、あえて未読無視して次の駅で写真付きで返す……という“自称高等テクニック”が使えたのに!)
***
『まもなく、○○駅です――』
(甘かったな佐々木彩乃! 俺には変人ばっかりだけど“使える”友達もいるんだよ。今回は倉科様の知恵を借りさせてもらったぜ!)
ということで、駅名標を撮って――
陽太:《今○○駅に着いた (写真付き)》
(……これ、なんかメリーさんの電話みたいだな。「私メリーさん、今○○駅にいるの」ってやつ)
すると――
彩乃:《私メリーさん。今、ひーくんの後ろにいるの》
(ッ⁉ ……いるわけねえだろ‼ 一瞬マジで振り向いちまったじゃねえか!!)




