80【陽】保健室拒否!? 俺が選んだのは校長室と……彩乃の手
ウチの学校は「教育のICT化」に続き、「大学を意識した授業カリキュラム」を売りにしている。
……要するに意識高い系アピール。
その結果、ありがた迷惑にもテストは一月下旬。去年同様、俺――一之瀬陽太兼ITIRiNの仕事の締め切りと丸かぶりしてしまい、ここ数日は死ぬ気で原稿を進めていた。
(頭痛い……。授業中じゃなきゃ今すぐあそこに行くのに。あと何分だ?)
うつ伏せのまま左腕の時計を見ると、残り40分以上。現実を突きつけられ、一人で絶望する。
(誰だよ、授業中にこっそり後ろから抜け出そうとしてる奴は。寒いからドアはさっさと閉めろって……)
「(ひーくん、ひーくん)」
(……誰だ、人の肩叩いて名前呼ぶ奴は)
体調が悪いせいでイラつきながら顔を横に向けると――。
「(ひーくん、立てる?)」
「(うん)」
「(じゃあ先生が黒板書いてるうちに、早くこっち来て)」
(……もうなんでもいいや)
ノートPCとiP○dを鞄に突っ込み、スマホを持って抜け出す。
彩乃は静かにドアを閉め、そのまま俺の手を握って歩き出した。
「はぁ、はぁ……おい、どこに連れて行く気だ?」
「どこって、保健室に決まってるでしょ」
「保健室やだ。校長室がいい」
「………………」
「校長室がいい」
「………………」
――結果。
「失礼します。ひーくんが言うことを聞かないので、仕方なく校長室に来ました」
「二人ともまだ授業中のはずじゃ……あー、なるほど。すぐに準備するから座ってなさい」
校長の声が聞こえた時には、俺はすでにソファーに沈んでいた。
「イチ、いつもの二つはテーブルに置いておく。毛布はもう少し待っててくれ」
「うーん」
(多分、俺が勝手に置いてるノンカフェイン栄養ドリンクと蒸気○ホットアイマスクのことだな)
「ひーくん、飲まないの?」
「うーん」
(頭痛で思考が回らない。でも――このままがいい、ってことだけは分かる)
「校長先生が戻ってくる前に飲んじゃお?」
「ううん」
「大丈夫。手は放さないし、ひーくんが寝てもずっと一緒にいるから。ねっ?」
(……なんか今の言葉で、不安が少し軽くなった気がする)
言われるがままにドリンクを飲み、アイマスクをつけた瞬間――限界が来た。
そのままゆっくり横に倒れる。
(んー……頭の下が柔らかくて、あったかい。いい匂いも………ん?)




