78【陽】クリスマス、俺はサメを抱いていた
街はイルミネーションで彩られ、どこもかしこもクリスマス一色。
手を繋いで歩くカップルたちを横目に――ぼっちな俺は健太を引き連れてI○EAに来ていた。
「おい、なんでリア充どもが同棲のために家具を選んでる中で、俺はお前といるんだ?」
「なんでも何も、誘ってきたのは一之瀬だし。そんなに嫌なら彼女作れよ」
「しかも今日はど平日だぞ? 暇かよ」
(俺は暇だけどな)
「で、結局なにを買いに来たんだ? 新しい家の家具とかか?」
「いや、家具も食器も全部揃ってる。俺が今日欲しいのは――」
そう言ってダッシュした先にあったのは……。
「このサメだ‼」
「あー、ちょっと前に流行ったやつね。……彼女の代わりにサメとか、可哀想に」
「うるさい! 俺はサメが欲しいんだ! さあ最強の一匹を探すぞ!」
「は? ぬいぐるみに最強とかあんのかよ」
「ほら見ろ、これはヒレが曲がってるからハズレ。こっちは口の縫い目ズレてて不良品。……最強個体は絶対いる!」
「お前……彼女いないからって、サメのデカぬいぐるみに一途すぎだろ!」
***
「サメ~」
「……いや本当に抱えてレジまで行くの? ここからめっちゃ遠いぞ。絶対疲れるって」
「ヒュー、ザッパーン!」
「ぶははっ! 飛行機じゃねーんだから『ヒュー』はないだろ!」
「パク、パク、パク。はい健太食べられたー」
「あはははは! バカすぎて逆に面白ぇ!」
(これめっちゃ気に入ったわ。彩乃にサメの写真送ったら、どんな顔するかな)




