77【彩】校長室で明かされる、衝撃の事実
「先ほどの話の続きだが、いくら私が校長という立場にいても、先生方を通さずイチから直接情報が入ってくるとはいえ――彼を守り切れる自信はない。実際、A男のことだってまだどうなるか分からないしね。そこで佐々木君にお願いだ」
「ひーくんのことなら、最初から守るつもりでした。もし校長が彼の期待を裏切ったとしても、私が付きっ切りでフォローします。だから安心して早期退職でもクビでも、好きにしてください」
「ひゅ〜う……。イチの“手綱を握ってくれる彼女を作れ”とは言ったが、これはまた恐ろしい子を好きになったものだ。これじゃあ悩みが減るどころか、むしろ増えてしまったな」
(別に私はひーくんみたいに頭の回転が速いわけじゃないし、知識量があるわけでもない。……でも“困った顔”をさせるくらいならできる。うん、このまま黙っておこ)
「交換条件ってわけでもないですが……今度は私の質問に答えてもらってもいいですか?」
「まあ、言いたいことは一通り言ったしね。答えられる範囲ならどうぞ」
「さっき二人で話していた“鍵を渡しておく”とか“自由に使え”とか……あれは何のことですか?」
「ああ、あれか。少し前にイチから“ひとり暮らしにいい場所はないか”と聞かれてね。そこで、今は物置として使っている私の家を貸すことにしたんだ。タイミング的にも丁度よかったしね。もちろんタダではないが、普通に借りるよりはずっと安い」
(……高校生がいきなり一人暮らし? 私みたいに事情があるならまだしも。じゃあ、まさか……修学旅行二日目。あの時、電話の向こうから聞こえてきた“女の人の声って”……⁉)
「念のため言っておくが、私の知る限りイチに彼女はいない。あの子は下心やキープ目的で一人暮らしを始めるような下衆な真似もしない」
「そ、それは分かってます。でも……修学旅行二日目の朝、私と明日香で電話をかけた時、後ろから“すみません、お待たせしちゃって”って女の人の声がしたんです。その直後、無理やり切られちゃって……」
「修学旅行二日目? ――ああ、それか。私から言えるのは一つ。“イチを信じてやってほしい”だな。……まあ、相手が好きな人となると、そう簡単に割り切れないかもしれないけど」
(なんで校長の方が、私よりひーくんのことを知ってるのよ! ホントなんなのこの人!)
「今年でいうと夏休み明け初日、イチが学校を休んだのを覚えているかい? 翌日は登校したが、一日中寝ていた」
「はい、覚えてます」
「実は彼、学校に内緒で“とある仕事”をしていてね。数ヶ月に一度、東京で打ち合わせがあるんだ。あの日もそうだった。だから君が聞いたという女性の声は――おそらく仕事相手だろう」
(……学校に内緒の仕事を校長が知ってて、しかも黙認してる? この学校、本当に大丈夫なの⁉)
そんな疑問を抱きながらも、予想外の収穫があった。私はお礼を言って校長室をあとにした。
ちなみにA男の処分は――校長の思惑通り“停学”で済んだらしい。
そのことを、ひーくんからL○NEで知らされた。
……まあ。私達の初L○NEを汚したA男のことだけは――絶対に許さないけど。




