64【彩】その頃、彩乃は
昨日は夜ご飯を食べた後、思い切って一緒に夜の清水寺へ行こうと誘ってみたところ、嫌な顔をされることもなく、私達の気が済むまでずっと付き合ってくれた。頑なに写真は撮らせてくれなかったけど。
でも今の私達の関係からすれば、大きすぎる一歩だったのは間違いない。
ホテルに戻ってからはその出来事も含めて“ひーくん”の話で盛り上がりすぎ、気付けば夜中の3時を回っていた。
ちなみに“ひーくん”とは、私が勝手に考えた一之瀬君の新しい呼び名。
他の誰も呼ばない、私だけの特別な呼び方だ。
――そんな余韻に浸りつつ迎えた翌朝。
遅くまで起きていたせいで、私達が起きたのは10時過ぎ。
そこから昨日二人で立てた“ひーくん合流作戦”を実行すべく、明日香が電話をかけてスピーカーにした。
『なに?』
「あっ、よーくんおはよう。ということで今どこにいるの?」
(なんだかモーニングコールみたいでいいなぁ。私も“おはよう、ひーくん”って直接言いたい)
『なにがということでだよ。あと今は東京にいる』
「東京⁉ それって誰かと一緒にってこと?」
(……え、東京⁉ 京都の間違いじゃなくて?)
『いや、一人だけど』
『すみません、お待たせしちゃって』
(……女の声⁉ 誰⁉ 先生? 親戚? それとも……まさか、彼女?)
「(ちょ、明日香! 今の声、誰⁉ 知ってる人?)」
「(ううん、私も知らない。よーくんが女の人と話してるのなんて初めて聞いたよ……一応聞いてみる?)」
「(私が直接聞くからスマホ貸して!)」
明日香からスマホを受け取り、焦りを抑えながら口を開こうとしたその瞬間――
『悪いけど一回切るぞ。何か用事があるなら後で掛けなおすから適当にL○NEでも送っといてくれ』
「えっ⁉ あっ、ちょっ待ちなさ―――」
「「……………」」
(……ひーくん、本当に東京で何してるの?)
次回予告!
飛行機の中で、陽太の“本音”がついに明かされます。
そして次に彩乃の視点へ戻ったとき――忘れられない瞬間が訪れます。
続きが気になる方は、ブクマ&評価で応援していただけると嬉しいです。




