63【陽】電話の向こうから聞こえた声
修学旅行なのに、俺は今東京にいる。
朝から新幹線に乗って、担当編集との打ち合わせのために。
ぼっちな俺にとって、クラスメイトと観光するよりこっちの方がずっと現実的……というか、逃げ場だ。
今は会議室で編集さんを待っていると――スマホが震えた。
(ん? 倉科から電話?)
「なに?」
『あっ、よーくんおはよう。ということで今どこにいるの?』
「なにがということでだよ。あと今は東京にいる」
『東京⁉ それって誰かと一緒に?』
「いや、一人だけど」
その瞬間、会議室のドアが開いた。
「すみません、お待たせしちゃって」
編集さんが入ってきて、俺が電話中なのに気づいたらしく小声で
『こっちは大丈夫ですよ』と合図してくれる。
けど、緊急の用事でもなさそうだし――
「悪いけど一回切るぞ。何か用事があるなら後で掛けなおすから適当にL○NEでも送っといてくれ」
『えっ⁉ あっ、ちょっ待ちなさ―――』
……最後の声。今のは、絶対に佐々木だった。
ってことは、スピーカーにしてた? それとも横にいた?
まあ、まだ十時過ぎだしホテルでも全然おかしくないけど。
「電話、大丈夫でした? ……なんだか相手の声が、ちょっと必死に聞こえましたけど。もしかして彼女さん、とか?」
「あははは。残念ながら、そんな人はいませんよ」
(いたら修学旅行サボって東京になんか来てないだろ。……多分)
次回予告!
飛行機の中で、陽太がついに“本音”を口に――。
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