62【彩】その頃、彩乃は
京都に来たなら清水寺には行きたい、ということで明日香と一緒にお店やお寺を回りつつ向かい、音羽の滝では私は恋愛成就、明日香は学業成就の水を飲んだ。
その後は次の観光スポットへ行く予定だったのに、なぜか頭に浮かんできたのは今夜の食事会場。どうにも気になって仕方なくて明日香に相談すると、
『もしかしたらよーくんが一人で座ってたりしてね』
なんて冗談めかして言いながらも行くのを勧めてくれたので、素直に従った結果――
「「………本当にいた」」
「(ちょっ、なんで一之瀬君一人なの? 部活の友達は?)」
「(てっきり部活の仲間と一緒かと思ってたのに。自分から誘えなかったのかな?)」
「(まあいいや、とにかく声をかけに行こう。一日中一人なんて絶対つらいでしょ)」
そう決めた私達は到着したばかりを装って近づき、明日香が声をかけた。
「あれ? よーくん一人だけ? ひっしーとかとは一緒じゃないの?」
「健太は大阪組らしいから一緒じゃない。あとは知らん」
「あとは知らんって、もしかして今日一日ずっと一人で行動してたの?」
「まあ、特に誰とも約束してなかったし」
(だったら私達が誘えばよかった。……いや、教室で毎日話してたんだから聞く機会はいくらでもあったのに! 私のバカ!)
後悔しつつも、もう彼を一人にさせまいと私達は向かい側の席に腰を下ろした。
やがて湯豆腐が運ばれ、三人で取り分けながら食べていると気になることが一つ。
――一之瀬君、食べる時は豆腐であろうと綺麗に箸で掴めてるのに、鍋から具材を取る時は必ず穴あきお玉を使い続けている。
(やっぱり……菜箸が苦手なのかも)
そう察した私はさり気なく彼の分も取ってあげることにした。最初は皿を渡してくれなかったのに、今では自然に――
「佐々木、取って」
「はい、ちょっと待ってね」
(普段は何でも一人でやってしまうイメージがあるだけに……今の一之瀬君、可愛すぎでしょ)




