42【彩】その頃、彩乃は
昨日は友達との約束があったから、ギリギリまで一之瀬君のことを見てから帰った。
そのとき明日香が、
『もしあれだったら、一部だけにはなっちゃうけど合宿中のよーくんを動画で送ってあげよっか? 多分夜の11時過ぎになっちゃうと思うけど』
なんて言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
だから私は宿題や家事を片付けたり、自分のことをやったりしながらその時間を待ち、ちょうどお風呂からあがったタイミングでL○NEが届いた。
『今日はランニングの様子を撮っておいたけど、全部で一時間くらいあるから……とりあえず終盤の○分くらいから見るのがおすすめかも』
言われた通り、ベッドに寝っ転がって動画を再生。
『もう死ぬ、もう無理、もう限界』
『はい、よーくん、あと一往復! それさっきも聞いたよ。早くしないと寺嶋君に一位取られちゃう!』
『アイツ今どこ?』
『えっと……あ、来た!』
『おまっ、もっと早く言え!』
(普段は全然そんな風に見えないのに……結構、負けず嫌いなんだ。ちょっと意外かも)
――画面の中で必死に走る姿を見つめていると。
『はい、よーくん一位♪ からの寺嶋君二位♪』
『はぁ、はぁ、陸上部……行け、体力お化け……』
『いやいやいや。ようだって十分おかしいから! 俺が行くならお前も道連れだ!』
『……絶対……やだ……』
(シャトルランの時は遠くて表情まで見えなかったし、すぐ外に出ちゃったから。でも今は……走り終えた後の荒い息づかいまで、こんなに近くで見えて……っ)
(……あ、やだ……体が熱い。ドキドキして、息まで上手くできない……んぅぅ……♡)
気付けば私は、頬を赤らめたまま一時停止ボタンを押してしまっていた。




