40【彩】その頃、彩乃は
夏休み中のある日。今日は友達と映画に行く予定で、ちょっとウキウキしていたのだけど――
バスで偶然会った明日香に誘われて、なぜか学校の中庭まで来てしまった。
「向井、ようが水鉄砲構えてる!」
「後ろ向きで打ち返せば問題なーし! くらえっ、ハイ○ロポンプ‼」
「はい残念! 今年の俺はゴーグル着用だ! 反撃開始‼」
「ぶふーーーーっ⁉」
「ナイス、一之瀬!」
……そこには、全力ではしゃぐ彼の姿があった。
(あんなに無邪気に笑って、子供みたいに遊んでる一之瀬君……胸がドキッとした。ほんとに同じ人なの? 私が知ってる、大人っぽくて落ち着いた彼とは真逆なんだけど)
「教室でのよーくんとは全然違うでしょ?」
「違うなんてもんじゃないよ! こんなの想像すらできないってば!」
「あはは。でもね、もし本当に好きになるなら……この姿も知っておいた方がいいと思ったの。……嫌いになっちゃった?」
「……そんなわけない。むしろ……ズルいよ、これは」
(こんなの、嫌いになれるわけないじゃん……)
明日香は笑って、それ以上何も言わず。
ただ私と一緒に――無邪気に笑う彼の姿を眺めてくれた。




