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33【陽】俺は既に知っている
六月の終わりが近いある朝。
俺はいつも通り本を読んでいたら、少し離れた席からやたら元気な声が聞こえてきた。
「じゃじゃーん! 今日、駅ナカの本屋で『世界最強の元一般人』の5巻フラゲしちゃいました~! 授業中に全部読みまーす!」
「はぁ!? マジかよ。俺んとこ、まだ売ってなかったのに! ずりぃ! 絶対ネタバレすんなよ!」
「え~、どうしよっかな~」
(……授業中に読む宣言とかアホか。でもまあ、その内容なら俺はもう知ってるんだけどな)
5巻のストーリーは。
主人公がマリノ王国の姫の帰省に同行して―――
とある事件で倒れ、再訪で―――
そして城に戻れば―――が待っていて……
二週間の出来事を経て、ヒロインとの―――で幕を閉じる。
そして俺は心の中でだけ、盛大にネタバレを垂れ流す。
――そう。俺は既に知っている。
この物語の続きを、最後の一文まで。




