30【彩】その頃、彩乃は
今日は体力測定最後の種目、シャトルラン。
後半組の私と明日香は前半組が走るのを座って待っていると、近くのC女とD女の会話が耳に入ってきた。
「A男がさ、“一番最初に抜けるのだけは嫌だ”って言ってたけど大丈夫かな? このグループ運動部ばっかじゃん」
「でも一之瀬がいるし平気っしょ。50m走、あいつ本気で走ってたのに帰宅部より遅かったし」
「他の種目は適当だったのにね。50mだけ本気って、実は自信あったとか?」
「それはないでしょ。もしそうなら笑うわ」
確かにあの時の一之瀬君は、テニスウェアの半ズボンに白い半袖ジャージという“完全運動仕様”だった。
少なくとも私には、本気で走ってるように見えた。
(……だからこそ、この二人の言葉に腹が立つ。どうして? なんで私がイラついてるの?)
「さっ、今の部内一位は寺嶋君の135回らしいけど……よーくんは超えられるかな?」
「えっ……?」
思わず声が漏れた。
そこには、あの時と同じ格好の一之瀬君が立っていて――スタートした。
『142』
「まだ余裕だ! もっと頑張れ一之瀬!」
先生の声に、周囲がどよめく。
「おい、今の学年最高って何回だっけ!?」
「確か……145回。バスケ部の○○だったはず!」
『146』
「明日香、間に合った! 一之瀬君まだいける!」
「うん、多分もう少しいける」
『149』
「ここまで来たら150だ! 頑張れ一之瀬‼」
その声に応えるように、一之瀬君は一気にスピードを上げ――
『150』
(ギリギリ……間に合った?)
先生がメモ係の生徒に向かって告げた。
「一之瀬の記録、150回!」
(……すごい。ただの無気力男子だと思ってたのに。ますます分からない……一之瀬君って、いったい何者なんだろう)
次回予告!
シャトルランで“学年トップ級”の記録を叩き出した陽太。
しかし本人は、自分が“最後の一人”だったことに気づいていない――。
一方で、その姿を見ていた彩乃の心は……。
彼の“無自覚最強”が、ついにクラス中に広まりはじめる――!?
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