262【明】魔法のおまじないは、解かれた
『これで残すは、後半をスタートしてからずっと先頭をキープし続けている○○選手のみ‼
しかし現在、一之瀬君と○○選手の差は距離にしておおよそ500m。言葉にすると近く感じますが、長距離走での500mという数字は、かなりの差を意味する距離数となっております。
にも関わらず、何か考えがあるのか冷静にペースメーカーとしての役割をこなし続ける謎の女生徒と……それを全面的に信頼し、ペースを乱すことなく走り続ける一ノ瀬君!
この二人にはもう既に、自分達が優勝する未来しか見えていないというのでしょうか⁉』
……なんて。
心の中で毒を吐きつつも、同時に私は、現在先頭を走っている子の映像を観察し続けていた。
そして今後の作戦を組み立て終えた私は、再び手元のタブレットの画面を、よーくんのものへと切り替える。
先程同様、ジャージの襟に付けているピンマイクをONにし、改めて彼に話し掛けた。
「よ~し。それじゃあ、あと100mちょい走ると、丁度ゴールまでの距離が3㎞になるから――そこから一気に、ラストスパートをかけていくからね?」
『………………』
しかし、よーくんからの返事は一切ない。
否。
これは、私が唱える“魔法のおまじない”を、よーくんが待っている証拠である。
「ということで、ここから先は本気の本気。一之瀬陽太の限界を――超えた状態で走ろうか」
『………………』
「大丈夫。だって、よーくんは私の自慢の弟なんだもん。今回も……絶対にできるよ☆」




