260【明】計算通り
「OKよーくん。よーくんが再スタートを切ってから、カメラに映り始めるまでに掛かった時間が約18秒。
多分、そこで丁度100mくらいだと思うんだけれど、感覚的にはどう?」
『大体あってると思う』
(正直、休憩時間が長かったから前半と同じペースで走らせるには少し時間が掛かるかも、って思ってたんだけど――
逆にそれのおかげで、彩乃ちゃんが用意した紅茶とはちみつをベースにしているドリンクの効果が、完全に出ているみたいだね)
ちなみに彩乃ちゃんがたまに作る“ひーくん専用ドリンク”だが、あれのベースはアイスティーと蜂蜜だったりする。
紅茶にはカフェイン(運動能力を向上させる効果)が、蜂蜜にはビタミンB1(疲労回復効果)が含まれており、
特に前者に関しては効果が凄すぎて、2003年までは禁止物質に指定されていたくらいである。
つまり今のよーくんは、疑似ゾーンに加えて――
合法ドーピング状態にある、ということだ。
「おっけ~♪ じゃあ取り敢えず、そのままのペースで1.5㎞くらい走ろうか。
そうすれば、約4分30秒後には――よーくんが大っ嫌いな人以外は、全員抜かせているはずだよ」
『んっ』
普段であれば、間違いなく
『そいつも一緒に抜かさせろ』
と駄々をこねるはずなのに、今のよーくんは絶対にそんなことを言わない。
つまりそれだけ、今回の件は本気ということだ。
(そりゃ~、彩乃ちゃんもヤキモチ焼いちゃうよね。
……かく言う私も、人のことを言える立場じゃないんだけどさ)




