255【彩】不安はない。不満はある
『彩乃ちゃんの口からそんな感想が聞こえてきたってことは、今のよーくん、薄っすら笑ってるでしょ?
直接本人の顔が見えない状況でこれをやるのは初めてだから、ちょっとタイミングを計るのが難しいかもって思ってたんだけど、大方平均タイム通りに進んでるみたいだし、あと10秒くらいで完全に入れるかな』
「いきなり私のスマホに電話を掛けてきたかと思えば、今度はお姉ちゃんマウント?」
『そんなまっさか~。私はただ、よーくんのお姉ちゃんとして、よーくんのやりたいことをやらせてあげるだけだし、もしそれに手助けが必要ならば、これまで通り手を貸してあげるだけ。
と言いたいところなんだけど、なんか私の知らないところで、私の手の届かない範囲にまでそれを広げちゃったみたいだから……ここはいい機会だし、彼女さんにもお手伝いいただけないかな~と』
「薄々感じてはいたけど、やっぱり明日香も見かけによらず、結構いい性格してたんだね」
『女の子はみんな色んな顔を持っているもの♪
それは彩乃ちゃんも同じでしょ?』
「私の場合は、主にひーくんの為だけどね」
『ちょっと、ちょっとそれは私も同じなんですけど⁉
何なら私は、よーくんが生まれた時からずーーーっとそうだもん!
私の方が全てにおいて、お姉さんなんだからね!』
「ふふっ、やっぱり明日香は、いつも通りの方が似合ってるよ。
ところで私の彼氏兼、お姉さんの弟さん。準備ができたのか、今にもスタートしようとしてるけど、大丈夫なの?」
『はっ⁉
もー、よーくんが全然、お姉ちゃんとしての私に彩乃ちゃんを紹介してくれないから、ついこっちに夢中になっちゃったじゃん‼
……って言っても、どうせ聞こえてないんだけど。
ということで、こっちは私達でどうにかしておくから、美咲ちゃんにマウントを取るのは勝手だけど、ちゃんとお手伝いの方もお願いね♪』
そんな言葉を最後に電話が切られたと同時に、ひーくんは他の人達より約10分遅れで、再スタートを切った。
長距離走での10分の差。
それは、素人の私が想像しているよりも、遥かに大きいのだろう。
だからといって、不安はない。
不満は、沢山あるけど。
(だいたい『私はお姉ちゃんだから、そんなことしないけどね』みたいな感じで最後言ってきたけど、先にマウントを取ってきたのはそっちだし!
もし私がこの後、美咲に対してそれをしたとしてもお相子だし!
あと私と明日香は、年齢はおろか、誕生日も全く同じ四月一日生まれです‼)




