252【陽】変身が終わるまで、待つ理由
俺以外のクラス代表が再スタートを切ったのに合わせて、そいつらの為に集まっていた女子は例年通り全員、既に校庭へと戻っている。
つまりこの場に残っているのは、俺、彩乃、藤村の三人だけ。
そのため周囲を気にせず普通に明日香と会話をしていると――
ちょいちょい。
(んだよ次は。こっちは今ヤンデレ幼馴染お姉ちゃんの説得で忙しいってのに)
なんて内心文句を言いつつも、相手が誰かは分からないが、先程とは違い今回はちょっと強めに肩を叩かれたこともあり、自分の意思で後ろを振り向くと、
「ふふっ♪」
にこにこ笑顔にも関わらず、目が一切笑っていないうちの彼女の姿がそこにはあった。
(聞こえる。俺には聞こえるぞ
『なんだか私の知らないひーくんと明日香の関係があるみたいだけれど、これは一体どういうことかな? もちろん説明してくれるんだよね?』
とかなんとかいう心の声が、これでもかってくらい聞こえるぞ)
(………………)
(よし、今度こそマジで一回逃げよう)
そう心の中で決意を固めたものの、流石に俺も馬鹿ではない。
先程の反省を活かし、今回は黙って走り出そうとするのではなく、ちゃんと彩乃の目を見ながら『明日香との関係はあとで全部説明するから』的なことを言うと見せかけ。
再度、二人に背中を向けるような格好に戻ってから、突拍子のない質問を投げかける。
「藤村。なんでニチアサに出てくる敵キャラは、揃いも揃ってみんなヒーローの変身が終わるまで、大人しく待ってるか知ってるか?」
子供の頃、誰しも一回は考えたことがあるであろう疑問。
どうして敵キャラは、最大の攻撃チャンスであるはずのあの時間を、黙って見過ごしているのか。
「えっ?」
当たり前のことながら、藤村の幼少期に見ていたテレビ番組や当時の思考など、一切知るよしもない。
しかし声のトーンからするに、コイツも同じようなことを一度は考えたことがあるらしい。
まあ質問の意図は、全く理解できていないみたいだが。
「答えは、自分が圧倒的不利な状況から相手に勝って見せた方が、周囲の絶望感が増すからだ」
「………………」
「ふ~ん。なるほどねぇ」




