246【陽】嫌な予感
藤村にいきなりジャージの裾を後ろから引っ張られたことで気が付いたのだが、どうやら他の奴らが続々と中間地点に到着していたらしい。
その証拠に、どこぞの彼女とは違い、ちゃんと伝説通り自分の想い人をじっと待ち続けていた女子達は、その相手に迎えに来てもらえたことが心底嬉しかったのだろう。
人によっては少し大胆なスキンシップを試みている奴も少なくない。
……まあ、全てにおいてウチの彼女には遠く及ばないけど。いい意味でも、悪い意味でも。
なんてことを一人で考えていると、再び藤村にジャージの後ろの裾を、今度は強めに二回引っ張られた。
(んだよ。俺はエスパーじゃねんだから、何か言いたいことがあるなら口で喋れよ。
……って言いたいところだけど、昔それで“明日香”に怒られたことがあるからな)
「………………」
昔の反省を活かし、黙って周囲を見渡すこと数秒。
(なにこの不快感。なんで俺が他人の問題に、こんな気持ちを抱かなきゃいけないわけ)
この陽キャマラソン大会の参加者は、俺を含め全員で八人。
そしてたった今、七人目が中間地点に到着した。
つまりこの場には、まだあと一人だけ到着していない奴がいることになる。
しかし、その人物には二つほどおかしな点があった。
まず一つ目は、そいつがさっきまで二位だったはずのクズであるということ。
そしてもう一つは――
もう少しで中間地点だというのに、不自然なまでにゆっくりと、まるで何かを入念に確認するかのように走っていることだ。
つまり藤村は、あのクズがこちらに向かってきているのに気付き、
それを俺にも知らせたくて、ジャージの裾を引っ張ってきた――そういうことだろう。




