244【陽】切り替え早すぎ彼女と、追いつけない俺
『んぅ~~~っ♡ そうやって顔を赤くして恥ずかしがってるひーくんも可愛い♡
はぁ……そんな可愛い顔をされちゃうと、また違った意地悪をしたくなっちゃうよ♡』
と、彩乃に言われた瞬間は、本気で「貞操の危機」というワードが頭の中をよぎったものの――
どうやらご自分の加虐趣味を、俺という彼氏で存分にお楽しみいただきながらも、警戒するところはちゃんと警戒していたらしく。
他の連中がそろそろここへ到着しそうだと察した彩乃は、あっさりと俺の唇を塞いでいた人差し指をどけ、そのまま藤村を隠すために元の立ち位置へと戻っていった。
あまりの切り替えの早さに、少しだけ拍子抜けしつつも。
ずっとポケットに入れっぱなしだった“例のイヤホン”の電源を入れて右耳に着けていると――
そんな俺の動きを横目で見ていたらしい彩乃が、どこか愛おしそうな……嬉しそうな表情を浮かべながら、
「ふふっ♡」
と、小さく笑った。
「あっ? なんで笑った?」
「べっつに~♡
そんなことより、ひーくんは早く水分補給をしなさい!
ここに着いてから、もう何分経ってると思ってるの?」
「おい待て。誰のせいでここまで水分補給できなかったと思ってんだよ。
どう考えても俺は悪くね―――って、へぇ?」




