21【陽】体育 (上) 俺、女子と勝負することになったんだが
うちの体育教師は、とにかくゆるい。
授業っていうより「体を動かせばそれでよし」スタイルで――
・体育館の半分でバスケ
・もう半分でバドミントン
・校庭でサッカー
・サブ体育館で卓球
この中から好きなの選んで勝手にやれ、が我が校の体育である。
俺は当然、毎回卓球一択。
先生の目が届かないから、パイプ椅子に座ってボーッとしてても誰にも何も言われない。
……これ以上の楽園を俺は知らない。陰キャ特典フル活用である。
――の、はずだったんだけど。
「今日は他のクラスが下を使ってるのと、バスケのゴールが片方壊れてるから……バドかサッカーから選んでくれ。その代わりバドは全面使っていいぞ」
(なるほど。今日はバドだな。順番待ちしてるフリしてればサボれるし、人数が足りないって事態もない。完璧な作戦だ)
そう決めて“順番待ちサボりモード”に入ろうとした、その瞬間――
一本だけラケットを持った誉が突っ込んできた。
「ちょっと来い、一之瀬」
「はあ? なんで?」
「さっき佐々木と“バドで勝った方がジュース奢り”って話になったから、俺の代わりに頑張れ」
(はぁぁ!? お前、元野球部だろ!? 相手は元家庭科部の女子だぞ!? なんで俺!?)
誉がバド得意じゃないのは知ってる。けど、それでも女子相手に負けるか?
……いや、そもそも“話したこともない女子”と勝負するイベントとか、陰キャにとっては地獄以外の何物でもないんだが!?




