235【彩】その頃、彩乃は
(………なんか思い出してたらまたイライラしてきたから、もうやめよ)
ということで、ここまでのあれこれを簡単にまとめると――
うちの可愛い彼氏が、人見知りの小さな子供みたいになりながらも、ものすご〜く頑張って美咲を“今の立ち位置”まで誘導して、他の奴らから隠すことに成功しました、と。
ということで――。
(ここから先は、私がひーくんを独占するターン‼)
……と、自分で回想を始めて勝手に自滅していたわけだけど、
よく考えれば、ひーくんは“私だけ”の彼氏なんだから、独占もなにも最初から全部私のものなんだよね。
……でもまあ、そんな理屈がどうでもよくなるくらいには、フラストレーションが溜まっていた私は、小さめの弁当バッグから透明なボトルを取り出して――
『ねぇ、ひーくん。今あなたが選んでいいのは“どちらか片方の手だけ”って言ったら……どっちを選ぶの?』
と、少し意地悪な“二択”を突きつける。
(って言っても、私がここで飲み物を飲ませないわけがないし……
というか、例え彼が“いらない”って言っても、無理やりにでも飲ませるし。
そのくらいのこと、ひーくんだって分かってるはずだから――当然選ぶのは左、なんだけど……)
そう思っていた、その瞬間。
『……なにその妙に妖艶なオーラを含んだ表情と喋り方。
さっきに比べれば大分抑えられてるとはいえ、こっちはひと段落ついて気が抜けかけてるんだから……やめてくれませんかね、いや本当に。
あと返答は……
“右手の飲み物を受け取ったあと、その空いた右手で左手でしようとしてたことをする”の一択で』
(って、なんで右手だけなのさ⁉
いや、ああいう屁理屈みたいな無茶な答えを返してくるのは想定済みだったし、別にそれはそれでいいんだけどさ!
どうせなら、素直に“どっちも”って言ってほしかったのに‼)
『むぅ、またそうやってクールぶって屁理屈みたいなこと言う!
ひーくんのばかっ!』




