233【陽】選んでいいのは片手だけ? 小悪魔彼女の二択ゲーム
ここで感情の赴くままに言葉をぶつけていいなら、速攻で『勝手にしろ』と言い返してやりたいところだが――。
うちの彼女こと佐々木彩乃は、ヤキモチ焼きな反面“やる時は本気でやる”。
しかも第三者がいる前でそれを実行するとなれば、
その結果としての“お互いの立場・優位性”や“周囲からどう見えるか”まで全部天秤にかけ、
そろばん日本一並みの速度と正確さで最適解を出してくる。
……そういうところが、恐ろしい。
というわけで、俺は“大人な対応”を選択。
あえてスルーすることで誰一人として犠牲者を出さず、平和的にうやむやにした――
だけではなく、超超超頑張って藤村を俺たち二人の背中の陰に隠すことに成功した、そのすぐ後。
真横に立っている彩乃が、空の左手と、透明なボトルを持った右手を俺の前に差し出してきた。
「ねぇ、ひーくん。
今あなたが選んでいいのは“どちらか片方の手だけ”って言ったら……どっちを選ぶの?」
「……なにその妙に妖艶なオーラを含んだ表情と喋り方。
さっきに比べれば大分抑えられてるとはいえ、こっちはひと段落ついて気が抜けかけてるんだから……やめてくれませんかね、いや本当に。
あと返答は……
“右手の飲み物を受け取ったあと、その空いた右手で左手でしようとしてたことをする”の一択で」
本音を言えば――
さっきまで彩乃がしてくれていた“姉が弟を落ち着かせるような触れ合い”じゃなくて、
今の雰囲気も相まって “恋人同士のそれ” をしたい気持ちの方が圧倒的に強い。
……強いのだが。
この短時間で藤村にウチのあれこれを見られているとはいえ、
一方は隠す気ゼロとはいえ――。
健太たちの前ですら、いまだに自分から彩乃の手を握れない俺が、
そんな大胆なことをできるはずもなく。
(……我ながら、かなりズルいとは思うけどな)
そう思いながら返事をすると、彩乃はさっきまでの艶めかしさから一転、むすっとした顔になって――
「むぅ、またそうやってクールぶって屁理屈みたいなこと言う!
ひーくんのばかっ!」




