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20【彩】その頃、彩乃は
ホームルームが終わってから一時間目までの十分間。
……この微妙な空き時間、みんな好き勝手に過ごしている。
私はいつも通り、前の席の明日香とお喋りしていた。
「それでね――あっ、先生来ちゃった。またあとでね彩乃ちゃん」
「うん。じゃあ次の休み時間ね」
明日香はすっと前を向いて、当たり前みたいに黙った。
私も同じように黙る。……まあ、他のみんなは喋り続けてるんだけど。
ふと視線を横にずらすと、今日の日直の一之瀬君が目に入った。
(あれ? いつもは号令がかかるまで本を読んでるのに、今日は読んでない。……もしかしてタイミングを計ってる?)
(なんだか緊張してるみたい。……ちょっと意外かも)
普段は全然動じなさそうなのに。
……気付けば、授業が始まるたびに横顔を追ってしまっていた。




