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隣の席の美少女だけ、俺の“無自覚最強”を知っている  作者: ITIRiN
中間地点の赤い糸

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223【陽】ひーくん、もう逃げられないよ?

『ひ〜ぃ、くん♪』


その一言と同時に、

さっきまでの“お怒りモード”はどこへやら。

最初から怒ってなんていませんでしたよ、と言わんばかりの甘さで、

彩乃が俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。


その瞬間、不安でぎゅうっと締めつけられていた胸が少しだけ軽くなって――

ほっと息をついた……のも、ほんの一瞬。


うちの彼女が“今回の件”を黙って流すわけもなく。

また逃がさないためか、抱きつく力を強めてくると同時に、

なぜか密着度まで上げてきて――


「ひーくん。私こう見えてね、今かなり怒ってるんだけど……

“私だけのひーくん”なら、なんでか分かるよね?」


(彩乃が“察してほしい時”とか、“怒られる案件”が発生した時に必ず言う、あの言葉。

それが『私だけのひーくん』)


(この呪いの……いや、魔法の言葉が出たってことは、

※少なくとも一度は同じことで怒られている

※もしくは俺が気付かぬうちに何かやらかしている

そのどっちか確定。

で、毎回“なんで怒ってるのか考えてみなさい”になる。

大体分からなくてさらに怒られる)


(……いや、俺だって本気出せば分かる時は分かるし。

答えが出るまで“数日”かかるだけで。

その間ちょ〜っと機嫌が悪くなって……

ちょうど泊まりに来る日と重なると、

夜のおかずが“生野菜サラダ(アボカド入り)”になるけど)


(でも今回は考えなくても分かる。

反省するところしかない。

あの状況で逃げようとしたのは……完全にアウト)


そんなふうに心の中で反省しつつ、ついでに――


(まあ……今週のお泊りは昨日済んだし。

彩乃が弁当に“生のアボカド”を入れるなんて、季節関係なく絶対にあり得ないし……

最悪でも数日は猶予がある……よな? 多分)


と、現実逃避も少しだけ。


そんな俺の思考なんて全部お見通しですと言わんばかりに、

ただでさえ密着している彩乃が、さらに身体を寄せてきて――


「ひーくん、ごめんなさいは?」


「………………」


(……え、今俺、声に出してた?)


「ごめんなさいは?」


「………………」


(いや、出してないよな……?)


「声に出してた、出してなかったじゃなくて……

ご・め・ん・な・さ・い・は?」


「……ごめん、なさぃ……」


「はい、よくできました♪ えらいえら〜い♡」


甘くて、ちょっとだけ意地悪な声。

それが耳のすぐ側で響いた瞬間――

逃げたい気持ちも、不安も、全部まとめて溶けていった。

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