222【彩】その頃、彩乃は
ひーくんが、私じゃなくて美咲のために頑張ってる。
その事実にちょっとだけ生まれたヤキモチと――
異性が苦手なままなのに、
それでもなんとかしようと必死で、
無理をして、限界がきてるのに踏ん張っていて。
そんな“彼氏の姿”を近くで見せられ続けたら……
意地悪の一つや二つ、したくなるのは仕方ないよね?
というか、ほんの短時間の間に
カッコいいひーくん
可愛いひーくん
いろんな表情のひーくんを見られるチャンスなんて――
逃せるはずがないでしょ♡
(もちろん、運動部のマネージャーとしては、
ここまでオーバーペースのひーくんをこのまま休ませないなんて論外なんだけど。
……でも、これはちょっと意地悪しすぎちゃったかも――)
(かわいい〜♡
かわいすぎる、なにあれ。ひーくんの可愛さ、反則級なんですけど♡)
(それに……なんか、さっきより美咲との距離が縮まってるのが気に食わないけど。
でも、そのおかげで私のひーくんはどんどん)
“不安に駆られていき”
“不安になればなるほど”
(はぁ〜♡
相変わらず不安を上手く処理できないどころか、
悪化する一方でちょっとだけ泣きそうになってるの……)
(それに、私が怒ってるってことすら忘れちゃうくらい一杯いっぱいで、
“甘えたいです……”って目をして、必死に我慢してるひーくん……
ほんっと最高♡)
ちなみに今、私は“怒ってるフリ”の最中なんだけど――
さっきからずっとニヤけそうなのを必死に抑えてるくらい、
目の前のひーくんは可愛い。
可愛いし、尊いし、愛しすぎるし。
でもこれは多分、癖なのかな。
ひーくんは人前では、弱さや不安をほとんど見せない。
だから、本来ならこんな表情は気付かれない。
(……ていうか、私を含めても
これに気付ける人って、この世に数人どころか、
片手で数えられるくらいしかいないんじゃない? ねぇ?)
そんなひーくんを前にして――
もう我慢なんてできるわけない。
「ひ〜ぃ、くん♪」




