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隣の席の美少女だけ、俺の“無自覚最強”を知っている  作者: ITIRiN
中間地点の赤い糸

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220【美】その頃、美咲は

多少やり方は強引だったものの――

新学期初日に抱いていた“彼への恐怖心”や“不安”は完全に消えていた。

その代わりに今は、


「一之瀬君のことをもっと知りたい」

「仲良くなりたい」


そんな気持ちが、自然と自分の中に芽生えてきている。


それが心境の変化なのか、別の理由なのかまでは分からないけれど。


(なんでだろ……一之瀬君に近付けば近づくほど、落ち着くというか……安心できる気がす、る……。

あれ? この感じ、どこかで――っ!!)


もう少しで、この感情の正体に手が触れられそうになった、その瞬間――。


気付いたときには、私は無意識のうちに――

友達でもなければ、まともに喋ったこともない異性。

ましてや今まさに目の前を歩いている 一之瀬君 のジャージの裾へと、

萌え袖の右手を伸ばしかけていた。


頭ではまだこの気持ちの正体を理解しきれていない。

それなのに、心だけが先に“一之瀬君に縋ろうとしていた”みたいに。


(……え、なに今の私。

ちょっと待って、なんで一之瀬君のジャージ掴もうとしてんの⁉)


そんな“自分の状態”を自覚した瞬間――


(見られてた? 今の見られてた?

どこまでバレてるの? どこまで気付かれたの⁉)


さっきから背中の辺りに刺さっている“ただならぬ気配”とセットで、不安が一気に膨れ上がる。


頭の中に動揺が駆け巡る中、その“ただならぬオーラ”の発生源へ視線を向けると――


(……あ〜、なるほどね。

さっきから感じてたこのオーラの正体、彩乃ちゃんか〜。

ははぁ……ははははははぁ……)


(って、笑ってる場合じゃないんですけど⁉

どどどどうしようっ!?

いや、落ち着け私。まずは現状の整理しよ。そうしよ)


(まず私は今、無意識とはいえ一之瀬君の背中にぴったりくっ付いて歩いてる。

しかもぶかぶかなウィンドブレーカーのフードを被ってるおかげで、表情はほぼ見えてない……はず)


(つまり!

表情どころか感情まで一切読み取れない……はずなのに――

なんであの子、笑顔なのに目が一ミリも笑ってない状態で、手招きしてるの⁉

え、全部バレてる……とか?

そういうやつ⁉)


(……ん?

“全部バレてる”ってどういう意味?

それってまさか……私が一之瀬君のこと、好きになっちゃったみたいって……そういう……?)


その考えが浮かんだ瞬間――

まだ気持ちを理解しきれていないはずの脳みそが、勝手にこう囁いてくる。


『あれ、もしかして……一之瀬君のこと……?』


(い、いやいや!

まだこの気持ちが恋心って決まったわけじゃないし……。

し、しかも平常心を装って被害者面してれば……なんとか……ならない。これは無理。絶対無理)


(よし!

もう頭の中も心の中もぐっちゃぐちゃだし、

脳みそが暴走しはじめてるし……

このまま勢いで一旦離脱します‼)


そう決め、頭が理解するより早く体を動かそうとした――その瞬間。


まるで私の心の声が全部聞こえていたかのようなタイミングで。


「ひ〜く〜ん〜?

まさかとは思うけど……今、私から逃げようとしたわけじゃないよねぇ?」


「「――――っ⁉」」

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