121【彩】体が求めたのに、心が先に満たされた
「……私ね、ひーくんに抱きつく前も、抱きしめてる時も……ずっとお腹の奥が熱くなってて。
もう何も考えられないくらい、心も体もいっぱいになっちゃってたの。
でも――ひーくんに抱きしめられて、“好きだよ、彩乃”って言われた瞬間……ふっと、全部が満たされたの。
なんが、それだけでい゛い゛っで……自然に思えぢゃっで」
『それはね、女の子なら誰にでもあることなの。だから、泣かなくていいの』
「……ほんとうに?」
『じゃあ逆に聞くけど、彩乃。あんたはなんで“彼とそういう関係になりたい”って思ったの?』
「たぶん……あの時は、ひーくんの言葉とか、考え方とか、全部があたたかくて。
“こんなに大事にされてるんだ”って実感して……もっと、それを感じたくなったんだと思う」
『なるほどね。
女っていうのは、“心で感じる”生き物なの。
体の満足を求めるのは一時的な関係。
でも、心と体の両方で感じたいって思えるのが――“本当に好きな人”なの』
「……うん。
ひーくんの言葉とか、行動とかで“キュン”ってすることは何度もあったけど……
“心で満たされる”って、こういうことなんだって。今日、初めてわかった気がする」
『そう。
彩乃が“したい”って思ったのは、彼に触れたいからじゃなくて――
本当は、“彼に愛されてる”って確かめたかったから。
でもね、あなたが本当に欲しかったのは、行為じゃなくて“気持ち”そのもの。
だから、あの瞬間に満たされたの。
……むしろ、それこそが“本当の恋”なんだよ』




