09【陽】お兄ちゃん、家ではだいたい話を盛る
帰りのホームルームが終わったあとは――
部活前に健太と一緒にサ○ゼでお昼を食べて、そのまま部活へ。
で、今は遅い夜ご飯を食べているところである。
まあ正確には“一人で”というほどじゃない。
台所では母さんが洗い物をしてるし、居間では妹がテレビを見てる。
ちなみに親父は風呂。
「それで、新しいクラスはどうだったの? 誉君と明日香ちゃん以外に知ってる子いた?」
母さんの問いかけに、俺は箸を止めて――ちょっと“盛る”。
「いや、知ってる奴はいなかったけど。まあ、斜め前の席に倉科がいたおかげで、前の席の男子と隣の席の女子とは仲良くなれた」
「へえ、良かったじゃない」
「でも誉は窓側の一番前の席だったから、教室に入ってからは一言も喋ってないな」
「……盛ってるでしょ」
横から妹がジト目でこっちを見てきた。
「は? 盛ってねーし」
「お兄ちゃんが初日から“仲良くなれた”とか、絶対ウソ。どうせ一言も喋ってないでしょ?」
「……うるさい。テレビ見てろ」
「図星なんだ」
「…………」
(こいつ、やっぱり一番敵に回したくないタイプだ)
実際のところ、放課後に健太と話すまで誰とも口をきいていない。
むしろ前の席の男子に関しては、見た目通りの「苦手なタイプ」確定で、仲良くなる未来は一ミリも見えない。
逆に隣の席の女子は、見た目はちょっとヤバそうだったのに意外と良い人そう――これは正直驚いた。
……まあだからといって、俺から積極的に関わる気はないけど。




