108【陽】涙のあとに交わした誓い
考えることを放棄した俺は、彩乃を強く引き寄せた。
左腕で腰を抱き、右手で頭をそっと支える。
すると――嫌じゃなかったのか、彩乃は顔を胸にうずめ、そのまま抱き返してきた。
だから俺は、そのままの体勢で口を開いた。
「彩乃が今泣いてる原因は俺にあって。
それに、彩乃が毎日弁当を作ってくれてた理由の一つに、お金じゃ返せない何かがあるってことまでは分かった。……でも、その先はどうしても分からないんだ」
(分からないから、どうすればいいのかも分からない。
それが悔しい。
好きな子が何を思い、何を求めてるのか分からない自分が――情けなくて、悔しくて。
正直、泣きたいくらいだ。けど……ここで俺が泣くのは違う)
「でも二度と同じ失敗はしない。……いや、もう二度と彩乃を泣かせたりしないって誓う。
そもそも別れる気なんて一ミリもない。だから――もう少しだけ時間をくれ」
自分でも、何を言ってるのか分からなかった。
けど、今の俺にはこれしか言葉がなかった。
それでも、彩乃には伝わったのだろう。
抱きしめる力を少し強め、小さな声で囁いてくる。
「……じゃあさ。絶対に私と別れないっていう証拠――ホワイトデーのお返しで、ちゃんと見せてもらおうかな?」
唇の端をちょっと上げて、わざといたずらっぽく微笑む彩乃。
その声音は泣き声混じりじゃなく、むしろ甘くて小悪魔的で――逆に俺の胸を強く締め付けた。




