105【彩】その頃、彩乃は
ひーくんと付き合いはじめて、もう二週間。
毎日部活が忙しくて、一緒にいられる時間はあっても――ちゃんとお喋りする時間は思ったより少なかった。
だからこそ。
二人きりじゃなくても、遊びに誘ってくれたのが本当に嬉しくて。
今日は何をするのかな? そう考えるだけで、胸がワクワクしていたのに。
「俺が彩乃に毎日作ってもらってる弁当、値段にしたら一食三百円くらいだろ? 二万円のウィンブレなら、ざっと六十七食分。
……って言うとちょっとアレだけどさ。デート代を交互に出すカップルもいるんだし、俺たちはこうやってバランス取るって考えれば、一回の出費が大きいだけで別に変な話じゃないだろ?」
(……ひーくんの言いたいことは分かる。
でも、私がお弁当を作るのはお金のためなんかじゃない。
一番は――ひーくんが「美味しい」って笑いながら食べてくれるからなんだよ)
「……よーくんのそれは、いかにも男の子って感じだから言わせてもらうけど。女の子にとって大事なのは“金額”じゃなくて“気持ち”。この意味、ちゃんと分かってる?」
彼がそういうことに疎いのは最初から分かっていた。
だから、納得できないことがあっても、そのたびに教えて、少しずつ“私色”に染めていけばいい――そう思っていたのに。
けれど今回ばかりは、内容が悪すぎた。
思った以上に胸に刺さって……。
油断すれば泣き出してしまいそうで、必死にこらえるので精一杯な私に代わって、明日香が「男と女では考え方が違う」って説明しようとしてくれているけれど。
(その様子だと、今のひーくんにはまだ難しい――っ……ダメ、お願い……泣いちゃダメ……ここで崩れたら……!)




