104【陽】初めての買い物デートと、すれ違う気持ち
彩乃がうちの部に入ってから二週間。もうすぐ三月になろうかという頃。
この一か月は合宿や練習試合で留守にしていたバスケ部とバレー部が、同時に戻ってきた。
さらに午後から体育館を使いたいとのことで――俺たちの部活は午前で終了になった。
つまり、午後は暇。
……とはいえ、彼女と二人きりで出かける勇気はまだなく。
結局、暇そうな健太と、困ったときに頼りになりそうな倉科先輩、そして本命の彩乃。計四人で近くのショッピングモールに来ていた。
「いつもは堂々とジャージで部活に来るひーくんなのに、今日はちゃんと制服で来たんだよね。
その時点で“どこか行くのかな”って思ってたけど……。ここに来たってことは、何か欲しいものでもあるの?」
「明日から外練ばっかりだからな。ホワイトデーのお返しってことで、彩乃にウィンブレを買いに来た」
「なるほど。銀行で三万も下ろしてたのはそのためか。……相変わらず、どこからそんなお金が出てくるのか不思議だけど」
(いや俺からしたら、お前がなんで銀行で下ろしてるところを至近距離で見てたのかのほうが謎なんだけど)
と心の中でツッコミを入れていると、彩乃が真面目な顔で口を開いた。
「確かにそろそろ買おうとは思ってたけど……。そんな高いお返し、本当にいらないから。むしろ怒るよ?」
(ネットでよく『彼氏=ATM』って見るけど……。実際、彩乃みたいな超可愛くて、しかも性格までいい子と付き合える確率ってどれくらいなんだろうな)
「俺が彩乃に毎日作ってもらってる弁当、値段にしたら一食三百円くらいだろ? 二万円のウィンブレってことは、ざっと67食分。
……って言うとちょっとアレだけどさ。デート代を交互に出すカップルもいるんだし、俺たちはこうやってバランス取るって考えれば、一回の金額が大きいだけで、別に変な話じゃないだろ?」
「……よーくんのそれは、いかにも男の子って感じだから言わせてもらうけど。女の子にとって大事なのは“金額”じゃなくて“気持ち”なの。その意味、ちゃんと分かってる?」
(????)
「(おい、今の倉科の意味分かるか?)」
「(全然。ただ、このままだと一之瀬VS佐々木+倉科の一対二で喧嘩になりそうなことと、佐々木が少し悲しそうな顔してることだけは分かる)」
(……うん。これは百パーセント俺が悪いパターンだな)




