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隣の席の美少女だけ、俺の“無自覚最強”を知っている  作者: ITIRiN
バレンタイン告白と、ふたりの距離

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99【彩】その頃、彩乃は

没収したチョコをそのまま持ち帰ってもよかったけれど、どうせ明日も学校に来るのだからと校長室の冷蔵庫に入れた私は、荷物を取りに行ってくれているひーくんを待ちながら、校長と向き合っていた。


「今年はまた、ずいぶん上等なチョコをもらったじゃないか。たしかベルギーの本店で作られて、銀座の店でしか買えないやつだったろ?」


「今、軽く調べてみましたけど……値段もかなりのものみたいですよ。……それだけ、あっちから見ればひーくんは重要な戦力ってことなんでしょうけど、高校生相手にこれってどうなんですか」


「そこはまあ“大人の事情”というものがあるから、仕方がないと言えば仕方がない。ただイチに限って言えば、それは逆効果だと私は思うよ」


校長は紅茶をひと口飲んでから、静かに続けた。


「何故なら、そんな汚いことを知らない、ちょっと子供っぽい彼だからこそ、あの小説が書けている。そこが崩れてしまえば、全く違う作品になってしまうからね」


「けれど担当編集たちは、ひーくんの本当の姿を知るはずもなく、ただ他の大人と同じように接している――」


(だからこそ、ひーくんの対策がある。そして、彼女として本当に支えたいなら、そのことにも気を配らなきゃいけない――)


そんなことを考えていると、校長は「ここからは独り言みたいなものだから、気にしなくていい」と前置きしてから、言葉のトーンを変えた。


「この腐った現代社会で“心優しい人間”が何も変わらず生きていこうとすれば、必ず一定以上“心の汚れた人間”の協力が必要になる。だが、この領域に達するには、最低でも数年の社会経験がいるんだ。たかが高校生の女の子が一人でその役割を果たそうなんて、ちゃんちゃらおかしい話さ」


「………………」


「けれど腐った大人ほど、自分の身内や親しい存在にはとことん甘い。政治家や警察のトップなんかがまさにそうだろう?」


「………………」


「だから、君は無理をしなくていい。普通に“イチの彼女”でいなさい。何か困ったことがあれば、素直に私や親御さんを頼りなさい。私は君たち二人に弱みを握られているし、親というものは、いつまでも自分の子供が一番大切だから、必ず助けてくれる」


(――この人と話している時、私はひーくんのためにって無理して背伸びしていたこと、全部バレてたんだ。流石は、自校の先生たちにすら遠慮なく心理操作を仕掛ける校長)


「もちろん、イチの彼女だからこそできることもたくさんあるし、その逆もある。彼がその域に辿り着くには、少し時間がかかるかもしれない。そのせいで最初は、佐々木君ばかりが頑張ることになるだろうけど、そこは目をつぶってやってくれ」


その言葉を証明するかのように、私の鞄とコートを“恐る恐る”といった様子で持ったひーくんが校長室に戻ってきた。


(『俺が彩乃の荷物を取ってくるから、ここで待ってていいよ』って言ってくれただけで、もう無理してるのが分かってたけど……ホントにも~う、大好き♡)

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