0001:アイ
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この物語は、私が私になるまでの、決して美しくなく、儚くもない、とても醜い物語だ。
この物語は、僕が僕になるまでの、とても美しく、そして儚い、そんなとても醜い物語だ。
この物語は、私が私になるまでの、決して美しくなく、それでも儚い、とても醜い物語だ。
この物語は、僕が僕になるまでの、とても美しく、それに儚くもない、だけど醜い物語だ。
この物語は、私たちが、僕たちが、私たちが、僕たちが、疎まれ、残酷になるまでの物語だ。
そして、この物語は、歪んだ愛の歪を汚す、とても醜く、とても尊い物語だ。
最後に、もう一度、いや二度、いや三度、いや四度、いや、もっと、これを、言おうか。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても醜い物語だ。
この物語はとても尊い物語だ。
この物語に主人公はいない。だけれど今回は、ここからは私が語り部を務めよう。そうだな、何から話そうか。と、迷っても仕方がないので思いついた頃から語って行こう。
まず私には感情が無かった。おっと、コレだと冷酷無血を想像されてしまうかな。私には恋愛感情と呼べるもの無かった。だから私は彼氏が欲しかった。
矛盾しているように聞こえるかもしれない。本当は彼氏なんていらないのかもしれない。というか、彼氏なんて求めるんじゃなかったと後悔している。
なぜ私が彼氏を求めたのか。彼氏ができれば恋愛感情と呼べるものを知れると思ったから。人なりに恋をしてみたいと思ったから。
これが三大欲求から来るものなのか、周囲から感じる劣等感から来るものなのか、まあ、今となってはどうでもいい事だ。もう、過ぎたことだから。
私の、私たちの人生が最後に崩壊したのは、崩壊しきったのは、高校2年生のときだ。崩壊の始まりも、崩壊の終わりも、崩壊の一部始終がその一年間に詰まっていた。思い出せば幸せになれるあの一年が、全てを壊してしまったのだ。
ああ、思い出すだけで興奮する。あの快楽、あの悦楽、あの時あの一年の全てが、今の私を今の私にしてくれる。それが今この瞬間もすごく嬉しい。
4月6日金曜日。桜散る桜吹雪の日に、私が、私たちが高校2年生になって初めての登校日。始業式の日だった。その日、私に彼氏ができた。これだと脈絡が無いか。その日私に一人の男が告白してきた。何て言っていたか、あの頃は彼のことが興味なかったから覚えていない。勿体ないことしたな。ちゃんと聞いておくべきだった。というか、ちゃんと聞いておけば今もまだ、あの幸せの中に入れたのかな。
彼はいろいろ言っていたけど、たった一つだけ覚えている。彼が言った「つきあって」の、一言にも満たない一瞬の言葉だけだった。そのあとも何か言ったけど、私の心は、私の耳をふさいだ。まだ彼が話している途中で私は「いいよ」と言った。断る理由はない。彼のことは嫌いではなかったから。彼と話したのはこの時が初めてだった。放課後の教室に呼び止められて、誰もいなくなった時、彼が話し出したのは覚えている。何を言っていたのか、私のどこを見て好きになったのか、どうして告白しようと思ったのか、私は彼を何も知らない。今になっても。
4月6日、この日は今でも忘れない。私に初めて彼氏ができた日。私が愛を知るために一歩踏み出した日。そして、私が、私たちが、私に、今の私たちになる歯車が回りだした日。ああ、そっか、この日は私が処女を捨てた日だったか。彼に告白されて、帰りに近所のホテルに寄ったんだった。まあ、どうでもいっか。その時のことは、あまり覚えてないし。私から語ることはなにもない。これを語るのは彼にしかできない事だろうから。だけど後悔はない。
4月6日はまだ終わらない。家に帰ってから気が付いた。彼と連絡先を交換していなかったことに。彼は今頃何をしているんだろうか、私はこれからどうすればいいのだろうか、彼とは今後どうなるのだろうか、そんなこと考えながら夕食だった。浮かれていたわけではないが、何を食べたか、どんな味だったのか、何も覚えていない。そして何も考えずに風呂に入って、それからは、なぜか眠れない夜を過ごした。彼のことを考えていたわけではない。自分のことを考えていたわけではない。これから愛を見つけられるのかなんて、そんなロマンチックな考えもしていない。ただ眠れない夜だった。そんなつまらない事しか覚えていいない。
私の4月6日はこのように終わった。そして、私の人生の終わりが始まった。
ああ、さも昔のことを語っているようになってしまったかな。この4月6日というのは、今か経っている私からすれば、ほんの1年前のことにすぎないだ。
そう、だから、私の人生はこれから終わりを迎える。最期には彼ら彼女らの笑顔に囲まれるために、最後に皆に会いに行こう。「逝ってきます」を言いに。「逝ってらっしゃい」を言うために。もう誰も信用できないから。
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