スポーン地点、プレイヤーは見えず
ホロッホウ ホロッホウ
聞いたことあるようなないようなな鳥の声が聞こえる寝室で目覚めたハリタくん。
フルダイブゲームの眠りの再現度は凄まじく、たとえゲームのスポーンであっても、寝覚めのぼんやり感が伴う細かさである。
ーーー プレイヤーネームとキャラクターネームを設定してください ーーー
起きがけの頭には厳しいダイアログに、手癖で名前を入力する。
プレイヤーネーム:てんぴよ
キャラクターネーム:エイネン
「てんぴよ」は、中学生のころに大量についた日本史絡みのあだ名の中で唯一気に入り、いつの間にか自分しか使わなくなったもの。
墾田永年私財法の発布元号の天平からきているぞ!
にしたって、あまりにも自分のためだけのスポーン地点である。
きんときは、日本サーバーのベータテストの応募者だけでも100万人を越えていたとされる大型タイトル。
万が一皆がこんな待遇だと、ゲーム容量とサーバーのパンクが不安になるところ。
通信技術の発展とゲームシステムの妙により、オブジェクトのテキストや当たり判定などは周辺のエリアのみ読み込まれていて、
インストールされているユーザーの本体には「ゴブリン」のデータすら常には入っていないのだとか。
そしてサーバーパンクについては……、なんかもう凄そうだけど一般ユーザーには何が凄くて安定してるのか分からない代物なのである。
コンコンコン
「エイネン様、お食事の支度ができております。 食堂までお越しください。」
ノックの音とともに、ナイスミドル執事の声がドアの向こうから聞こえる。
もはやぎこちなさの欠片もない、ずっとエイネンとして暮らしてきたかのような声がけに、感動を覚えるてんぴよ。
「はーい、ほどなく〜」(パッシブスキル 「挨拶」が発動)
男爵令息としてはあまりに気の抜けた返事を、システムに挨拶にされてしまうてんぴよ。
一挙手一投足をAIに評価されるようなレスポンスの早さに気づく。
(油断も隙もないな、棚とか瓶とか調べてまくってたらそういう評価を受けそうだ)
実際に序盤に「ぬすっと」や「物さらい」などの称号を最初に取得してしまい、
付け替えることができずに恥をかいたベータテスターもいたのだが、それはてんぴよとは関わりのない話で……
「せっかくのお貴族様なら、ゆとりある立ち回りをしなきゃね」
運良く「こそ泥貴族追放ルート」を回避していたハリタ青年なのであった。
ストーリーのない攻略的な立ち回りだと、いい影響でにくいよ、といった回
電車で子どもたちがタブレットでシャンフロを見てて、VR妄想が捗りました