一芸に秀でたら、引き返せないよね
シンギュラっていけ
ーーー バックボーンを設定してください ーーー
AIがシステムに組み込まれたゲームで、ユーザーがなにかを設定するということ、
それすなわち、「メケモンの不可思議ダンジョン」的に自動でなにかが設定されてしまうということにほかならない。
そしてなにも情報がない今、ハリタくんはこう思った。
「じゃあ気分が乗る設定が1番だね!」
この判断の早さと、思い切りの良さが、今までいい方向にも悪い方向にも素早くころがってきたのである。
「いろいろやりたいからお貴族様としての勉強には特化してないほうが良い
剣や魔法に秀でたりすると反対側が欠落しそうだしいまいち
でも情報は一杯あったほうがいいから、使用人とは仲良しなほうがよくて……」
そうこうして作り上げたバックボーンが……
『地方貴族の三男、カリスマあふれる長男と武に秀でた次男、魔法が得意な長女を上に持つ末っ子だが、愛されて育ったため兄弟へのコンプレックスはない
新しいことが好きで、噂話や新聞、文通などを好む
一方で貴族教育はあまり好まず、行儀よく何とかやり過ごしている
悪く言えばほうけもので飽き性、よく言えば嗅覚が良く器用の広く浅くタイプで、
家族や使用人たちからは「貴族たりえない」「親しみやすい」と表裏一体の評価を受けている』
新作が出てはさわり、流行作が現れればさわり、飽きたらやめを繰り返してきたハリタらしい、ミーハーなキャラを作った模様。
ーーー こちらで決定しますか? ーーー
【はい】 【いいえ】
迷いなく【はい】を選択すると……
『サブジョブは「男爵令息」になりました』
『スタートスキル「挨拶」「噂話」「読書」を入手しました』
『スタート地点が「ハラルド男爵家 屋敷」に変更されました』
『プレイヤーの【人脈】にNPCが追加されます』
「……マジ?」
ベータテストには無かったスタート地点の変更や【人脈】のシステム、サブジョブの自動選択などにあっけにとられるうちに、無情にもファンファーレのようなBGMが聴こえてきた。
『それでは 「Golden Age」 の世界へ いってらっしゃいーーー■』
「進むタイミングくらいを選ばせろや〜い!!!」
「挨拶(クールタイム 1日/1人)」
どのNPCも現評価段階の上限ギリギリまで、使うごとにじわじわ評価を上げられるスキル。気長だけど便利。
「噂話(クールタイム 1日/1人)」
NPCからの評価によって、応じた噂を教えてくれる。基本はお使いクエストが生える程度。
「読書(クールタイム 効果切れ後1時間 / 効果時間15分)」
使用すると読書にバフがかかり、普段気づけない内容に気づけるかも?