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魔物と震える悪夢

・第五章 魔物と人間の関係史:恐怖、崇拝、接触


・第一節 敵か、使者か:魔物と人間の初期接触伝承

魔物と人間の関係は、基本的に対立的なものであり、現代においてもその本質は変わらない。魔物の凶暴性は常に人間社会にとって脅威であり、彼らとの接触は避けられない場合を除いて、ほとんどが破滅的な結果を招いてきた。これまで人間は、魔物に対して積極的に戦いを挑み、殺すことでその脅威を排除するという方法を取ってきた。魔物に殺される前に、先に魔物を討つしか選択肢はなかったのだ。


伝承によると、魔物による襲撃を受けた集落や街も数多く存在し、それらは魔物の凶暴性に対抗する術を持たなかったため、壊滅的な被害を受けたという。中でも、歴史に名を刻んだ「アグラシスの夜」と呼ばれる事件では、数百人もの命が奪われ、街は完全に消滅した。この出来事は魔物と人間の戦争の象徴とも言えるものであり、その後も多くの民間伝承や歌に歌われてきた。


しかし、これらの対立的な接触だけが人間と魔物の関係を全て語るわけではない。実際には、魔物に対する畏怖とともに、一定の共生関係や信仰の対象として魔物が扱われた事例も存在する。魔物が何かしらの象徴として崇められ、ある種の祭儀や儀式で扱われることもあった。これらの伝承において、魔物は単なる脅威ではなく、神秘的な力を持つ存在として登場するのである。


とはいえ、魔物との接触は依然として非常に危険であり、その特異な生態や本質についてはまだ解明されていない部分が多い。そのため、人間社会では魔物に関する研究は限られた場所でのみ行われており、一般的には警戒すべき存在として扱われている。


・第二節 恐怖の象徴としての魔物:信仰と排除

魔物は、魔王と異なり、ほとんどの文化において単なる恐怖の象徴として捉えられてきた。その存在が持つ異常な凶暴性と恐ろしい外見から、魔物は常に人間社会にとって破壊的な脅威と見なされ、その接触は避けられるべきものとされてきた。多くの宗教や信仰体系において、魔物は一切の神聖性を持たず、むしろ死や破壊、混沌を象徴する存在として理解されていた。


もちろん、魔物に関する信仰的な解釈がまったくなかったわけではない。歴史の中には、魔物が神聖視された例も存在する。しかし、これらの事例は少数派であり、一般的に魔物は恐怖の対象としてのみ存在していた。魔物が人間社会に登場したとき、それは必ずといっていいほど破壊を伴う。魔物が引き起こす災厄、破壊行為、死は、崇拝という感情よりも圧倒的な恐怖を呼び起こした。


魔物が神殿に祀られることもあったが、それはむしろその「力」を恐れ、畏怖し、コントロールしようとする試みの一環として行われていた。魔物に関する祭儀や儀式は、決してその存在を崇敬するためではなく、その強大な力を抑え込み、災厄を未然に防ぐためのものだった。つまり、魔物が関与する宗教儀式や祭りは、魔物がもたらす恐怖と破壊を鎮めるための「防衛戦略」だったのだ。


実際、魔物が信仰の対象として崇拝されることは非常に稀であり、ほとんどの信仰体系において魔物は「邪悪」「破壊的存在」として一貫して扱われてきた。ある種の儀式においては、魔物に対する奉納を通じて人々はその存在を「制御」しようとしたが、その本質的な目的はあくまで恐怖を回避することであり、魔物自体に対する崇敬とは無関係であった。


魔物と人間の関係においては、恐怖が常に主導権を握っており、魔物に対する信仰が崇拝ではなく、自己防衛の一環として存在していたことがわかる。魔物が引き起こす現象や破壊的な行為は、その本質的な「不安定さ」を象徴しており、これを鎮め、制御するための手段として、魔物に関連する儀式や祭祀が存在していた。しかし、魔物を信仰することはほとんどなく、その全体像は「恐怖」と「脅威」としての側面が強調されてきたのである。


・第三節 魔物への自衛手段:戦術と道具

魔物の凶暴性とその恐怖的な存在感に対して、人間社会は様々な自衛手段を講じてきた。魔物との遭遇はしばしば破壊的で致命的な結果を招き、集落や街が滅ぼされることも珍しくなかった。そのため、人々は魔物に対する防衛策を築き上げ、これまでに数多くの戦術と道具が開発されてきた。


一. 防衛的な戦術と集団による対抗

魔物に対する最も一般的な自衛手段は、集団による協力と連携であった。魔物の凶暴性が非常に高いため、単独での戦闘は避け、集団で協力して魔物を撃退することが最も有効とされた。集落では、魔物の出現が予測される場所に防衛隊を組織し、見張りや監視を行っていた。魔物が出現した際には、事前に定められた合図によって住民全員が避難し、集団で魔物に立ち向かう準備が整えられた。これらの集団戦術は、魔物の行動をある程度予測し、その行動範囲を制限することを目的としていた。


また、集落周辺には堀や壁を築き、魔物の侵入を防ぐための物理的な障壁が設けられることも多かった。これにより、魔物が集落に直接的な攻撃を加える前に時間を稼ぎ、住民が反応するための時間を持つことが可能となった。


二. 魔物を撃退するための道具と武器

魔物の恐怖を回避するために、人間はさまざまな武器や道具を開発し、戦闘に備えてきた。特に、魔物の強靭な肉体や凶暴性に対抗するためには、通常の武器では太刀打ちできなかった。そのため、魔物専用に開発された特殊な武器が登場した。例えば、鋭い刃を持つ槍や斧、大型の鉄製のハンマーが一般的に使用されていた。これらは魔物の厚い皮膚を突き破るために設計されており、通常の刃物では切れない部分を攻撃できるよう工夫されていた。


また、魔物が接近する前に発見し、撃退するための道具として「香薬」が用いられることもあった。これは特定の成分を含んでおり、魔物が嫌う臭いを発生させることで、魔物を遠ざけるための予防策として使われた。


三. 魔物の攻撃に備えるための教育と訓練

また、魔物に対する自衛手段として重要なのは、住民や兵士たちに対する教育と訓練であった。戦闘の際には、どのようにして魔物の攻撃を避け、反撃するかという知識とスキルが必要不可欠だった。特に、魔物の奇怪な動きや予測不可能な攻撃パターンに対して、どういった戦術が有効かを学ぶことが重要視されていた。


四. 魔物との接触を避けるための文化的措置

最終的には、魔物との接触そのものを回避するために、文化的な措置が講じられることもあった。例えば、魔物の出現が予見される場所では、特定の神聖な儀式を行うことで魔物を遠ざけることを試みた。また、特定の月や季節には、魔物が活発になると信じられ、その時期に外出することを避ける風習も存在した。これにより、無用な遭遇を避け、住民の安全を守ろうとする文化的な努力が続けられてきたのである。


魔物は凶暴な者か…。確かに…なりふり構わず襲ってきた…。村長さんからもらった剣で倒せたから…魔物専用の武器だったのかな…。村でも魔物が来たときは大声で知らせて、戦える人以外を一斉に避難させてた…。ちゃんと理にかなってたんだな…。


次の章に進む。


・第六章 アヴェニック出力振動の謎と周期性


・第一節 周期現象としてのアヴェニック出力振動

アヴェニック出力振動(Alviniack Koliaksa Polskqueda)は、魔王に関連するとされる現象の中でも、最も周期的かつ広域にわたる影響を及ぼすものとして知られている。その特徴的な振る舞いは、約三十年周期で出現し、世界各地に凶作や家畜の不可解な死、人間の精神錯乱といった多面的な異常を引き起こす点にある。この現象は平均して三か月ほど継続し、その後、特に明確な原因が見られないまま突如として沈静化する。


この現象が初めて記録されたのがいつであったのかは定かではない。最古の明確な記録がどれであるかは今なお議論が分かれており、既存の文献においても、その発生が記された年代や地域は一様ではない。ただし、断続的に残された古記録や聖典の断章には、アヴェニック出力振動と思しき記述が複数存在しており、現代の魔物学および環境史の分野では、周期的に繰り返される「災厄の波」として体系的な研究が進められている。


なお、この振動が実際に「出力」されているのか、あるいは何らかの次元的干渉によって発露しているのかについては意見が分かれており、振動という語自体が比喩的であるとする研究者も多い。現在のところ、発生メカニズム、ならびに自然的・超自然的な因果関係については科学的に検証された根拠が存在せず、「魔王の覚醒」あるいは「潜在的存在圧の上昇」といった言説が通説化しているにすぎない。


・第二節 災厄の形態とその記録

アヴェニック出力振動の期間中に発生する事象には、いくつかの共通した傾向が存在する。まず第一に、農作物の生育異常、特に花芽形成や根の発達不全が多発し、広域的な凶作がもたらされる。これは特定の気候変動と一致しない点が注目されており、振動が農業生態系に直接的な干渉を行っている可能性を示唆している。


第二に、家畜が突如として死亡する、あるいは群れ単位で異常行動を起こすという報告が相次ぐ。これには中枢神経系への不可視の影響が疑われており、一部では「知覚干渉波動」の存在が仮説として提唱されている。


第三に、特定の地域では人間に対しても精神的錯乱、幻覚、重度の不安障害が発生することがある。これらの症状は「アヴェン錯乱症候群(Alviniack Junssit Hithemme)」と呼ばれ、過去の記録においても「人が夜の中で神を見た」といった言い回しで描写されている。この症候群は単なる一過性の精神錯乱にとどまらず、鬱状態や悪夢の慢性化、さらには一部の事例では多重人格的な乖離を含む人格障害の発症が確認されている点で特異的である。


この精神的影響に関しても、発症者の身体的異常やウイルス・菌類等の病原体の存在は確認されておらず、既存の精神疾患と異なるメカニズムによって引き起こされていると考えられている。現時点では、アヴェニック出力振動が人間の精神構造に対して直接的な干渉を及ぼすという仮説が有力視されているが、その具体的な作用機序は未解明である。


・第三節 原因不明性と魔王との関連性

この振動の最大の謎は、その原因と沈静化の条件が未だに判明していない点である。過去においても、周期的な発生が予測されていたにもかかわらず、実際には数年の誤差を伴って出現した例もあり、規則性があるようでいて完全には読み解けない不安定性が特徴とされている。


民間伝承や一部の学派では、アヴェニック出力振動は魔王の深層意識が世界に漏れ出した「情動の波」であると信じられており、魔王の活動に連動する一種の「精神的放射現象」として捉えられている。この観点からすれば、振動は魔王という存在が依然として「世界のどこかで起動状態にある」ことの証左であり、いまだ世界が魔王の影響下から完全に脱していないことを意味する。


しかし、これに対して批判的な立場をとる研究者たちは、振動の発生と魔王の「歴史的活動」が常に一致するわけではないことを指摘し、より包括的なエネルギー異常、あるいは未知の自然法則の反映として解釈すべきであると主張している。


鬱状態や悪夢の慢性化…。


悪夢の慢性化…。


悪夢…?


次の章に進む。

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