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トリリオン*トリリオン~最強転移OL異世界資産形成術~  作者: 橘 千秋
第3章 新興貴族編

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47話 ハーチス子爵とダンジョン 後編

久しぶりの更新なのでざっくりとしたあらすじ。

お金稼ぎが大好きな20代OLの蜂須莉々菜。仲良し高校生グループと異世界に勇者召喚されるが、国がクソだと判断して速攻離脱。隣国の帝国に逃げ延びるとスキルを使って最速でAランク冒険者になり、子爵位も得てウハウハ……と思ったら、荒れ果てていわくつきで物理的に滅びそうな領地を押し付けられてしまう。とりあえず領地へ視察に来たら、枯れかけた世界樹が何故かダンジョンになってる。よし、入ろう。ショボい、なんかダンジョンを従えられた。そしたら、世界樹の巫の白髪の少女が襲い掛かってきた!


蜂須莉々菜……主人公。メンタルつよつよ、スキル強奪お姉さん。

シロタ……主人公の契約精霊(無能?)

ツバキ……領地を管理していた役人。今日初めて会った。ありんす言葉。

メイズ……褐色ロリの見た目だがダンジョンの本体。心は魔物。主人公に分からせられ契約。








「許さなくていいですよ」



 白髪の少女が目を細めると、床から電気コードを束ねたような見た目の触手が10本ぐらい生えて、真っ直ぐにこちらへと襲い掛かる。



「テメェ、クソ亀男女! また、勝手にあーしのDPダンジョンポイントを使いやがって……おぃぃいい! この勢いだと枯渇するじゃねーか!」



 地団駄を踏んでいるメイズを無視して、積極的に急所を狙ってくる触手を取りあえず避けた。


 眼前を擦り抜けた触手から香るツンとした臭いに、私は顔を顰める。



「全部、毒が塗ってあるのか」



 しかし、私はスキルによって毒は効かない。


 とりあえず剣を振り回し、根元から触手を刈り取った。




「あらあら。脇がガラ空きですよ」



 穏やかな声で白髪の少女が言うのと同時に、戦いを静観していたツバキへと新たに生み出された触手が襲い掛かる。


 ツバキは目を見開き回避行動を取ろうとするが、不意の一撃だったのか間に合わない。


 私はスキル『転移』を使い、触手を遠くへ無理やり飛ばした。



「た、助かりんした、領主様」



 胸を抑えて、ツバキはホッと息を吐いた。




「……無傷、ですか」




 白髪の少女は驚きながらも笑っていた。


 私はこの状況に違和感を持ち、怪しい者の喉元へと剣を突き立てる。



「どういうつもりだ。ツバキ」


「なんのことでありんすか」



 剣が突き立てられてなお、ツバキはとぼけている。しかし、手は震えて額には汗がにじんでいた。



「戦闘に長けているはずなのに、棒立ちで警戒もしないなんておかしい。それにあの怪しい巫やメイズを見ても、あまり動揺が見られなかった」



 私はツバキを見つめたまま、瞬きもせずに顔を近づけた。



「お前、巫と繋がっているな?」


「……正解でありんす。正直に言うと領主様を試させてもらいんした」


「すべて、わたくしのせいなのです。ツバキは決して敵ではございません。どうか刃を下ろしていただけませんか」



 白髪の少女がおろおろとしながら懇願する。


 私は警戒しつつも剣を下ろした。すると、ツバキが片膝をついて首を垂れる。



「大変申し訳ございんせん」


「わたくしも無礼をお詫び申し上げます。獣人族を、世界を救いうる偉大なる勇者様。わたくしの名前はスイレン。150年間、あなたをお待ちしておりました」



 白髪の少女――――スイレンは泣き笑いをした。そして、機械装置のポッドから出ると、ツバキに習って膝をつく。


 彼女たちの真摯な様子から敵意は感じられない。



「この状況を説明してもらうよ」



 私がそう言うと、スイレンは頷いた。しかし、様子を伺っていたメイズがスイレンに掴みかかる。



「おいいいい! テメェがポッドから出たら生命力の供給が途絶えて、あーしが死んじま――――」


「うるさいでありんす」


「びゃぁッ」



 床から細い触手が生え、メイズを弾き飛ばした。そして壁に激突し、潰れたカエルのような声がでる。



「さて、静かになったところで説明しましょうか」



 スイレンが笑みを浮かべると、空中に平面の地図が浮かび上がる。


 地図は昔の物のようで滅びた獣人の国が描かれており、現在地を示しているのか、その中心にある世界樹に赤く点が光っていた。



「150年ほど前のことです。わたくしは滅びた獣人の国の巫の一人でした。当時はまだ若く、巫としても新人だったため、どうしてそうなったのか分かりませんが……およそ一か月で国は腐敗し、王は乱心しました。家族を人質に取られるなどして、巫たちは積極的に殺されたのです」



 1か月で国が腐敗するなんてあり得るのか? 普通は長い時間をかけて腐っていくものだろう。



「宰相であったハイエルフのリュネルが不在だったこともあり、それからは早かったです。国庫を使って魔素の源泉へなんらかの実験を行って失敗。世界樹が魔素を吸えなくなります。自然は徐々に朽ちていき、獣人への差別が爆発的に広がりました」


「滅びた獣人の国の周辺国に差別が広がるなら分かりんす。けれど同時期に……それこそ遠う離れたわっちの故郷の東の果てにある島国にまで広がりんした」


「どう考えても不自然だな」


「獣人族の世界的な虐殺騒動にまで発展しなかったのは、宰相リュネルが帝国と取引したおかげです」



 地図の国境が書き換わり、滅びた獣人の国が帝国の領土となった。



「生き残った巫たちは、獣人族の長く苦しい時代を察しました。そこで獣人族の中では珍しい長寿の亀種であるわたくしに、皆はすべてを託しました。わたくしは獣人族再興のために世界樹へ仕え続けたのです」


「わっちは獣人族の地位を上げるため、東の果てから移民としてやってきんした。その後、賢者リュネル様の権力でアシュガ帝国の文官にねじ込んでもらいんした。まあ、仕事が出来すぎて生意気ゆえ左遷されんしたが」


「獣人族は利用され、狙って滅ぼされたのか?」


「その可能性が高いです。獣人族は本来、神の守護者であり3大聖地である世界樹を守る者。そして残りの二つの聖地、鬼人族が守る天空島と人魚族が守る竜宮城はどこにあるのか分かりません」


「聖地……ここと同じく魔素の源泉がある場所か。見当は付けているのか? 鬼人族と人魚族との交流は?」


「おそらく鬼人族は一部の者で徹底的に聖地を隠しています。人魚族は不老不死をもたらす薬になると虐殺されて今はほぼ絶滅に近く、竜宮城の場所も失伝しました」


「神の守護者が狙い撃ちにされた可能性が高いな。関与しているのは侵略者アグレッサーか」


「その通りです」



 聖地が侵略者にとって特別な利用価値があるのか、それとも滅ぼしたいのか。とりあえず、神の守護者とされている獣人族、鬼人族、人魚族は邪魔な存在なんだろうな。



「私が獣人族を重用したとしたら、侵略者は面白くないだろうな」


「おそらくは」


「だが、侵略者共の思い通りになるのはもっと面白くない」



 獣人族は私が目を付けたとっておきの人材だ。逃すつもりは毛頭ない。



「そんなことはどうでもいいから! マスター、早くしないとあーしが死ぬ死ぬ死ぬぅぅうううう」



 メイズが床を這いながら私へ懇願する。



「おや。世界樹の寿命もそろそろ尽きそうですね」


「のんびり言っている場合ですか、スイレンさん! ご主人様、早くなんとかしないと」


「なんとかねぇ」



 シロタは焦っているが、こればかりはどうしようもないんじゃないだろうか。調べる間もなく滅ぶならそれも運命としか。



「魔素の源泉は配管のようなもので、それ自体は地層奥深くを通っています。ただ、今は汲み上げるポンプが破壊されている状態です。偉大なる大精霊の卵であるシロタ様であれば知覚できるのではありませんか?」


「だって、シロタ。気張ってやれ」



 適当に無茶ぶりしてみた。



「わ、分かりました。できなくても怒らないでくださいね」



 シロタは四つ足を踏ん張りながら、プルプルと震えている。どう見ても散歩を嫌がる犬にしか見えない。



「ふぬぬっ。なんだか、大きなモヤモヤとしたものが詰まっているような感覚が……だいたい右斜めの物凄く下らへんに……」


「ねえ、スイレン。魔素はどのあたりに汲み上げればいいの?」


「この部屋が世界樹の心臓のような場所です。ここに魔素がくれば自然と循環しますよ」


「どうせ滅びるなら適当に試してみるか」



 私は手をかざしてスキルを発動させる。



「スキル<転移門>」



 目の前に転移門の扉が二つ現れた。私はそのうちの一つを床の下に移動させる。


 スキルで作り出したからか、転移門には物理法則は効かないらしい。床には傷一つなく擦り抜けて行った。



「シロタ、右下の方に移動させたけど何か感じるか?」


「少しムズムズとした感覚が……もっと下かもしれません」


「さて、どこまで移動させられるか」



 転移門を設置する際の移動範囲までは確かめていない。転移門を設置する場所に行くことができればいいのだが、さすがに地中は無理だ。



「ご主人様! その辺りでビビッときました」



 シロタが毛を逆立てた。


 それと同時に室内がミシミシと軋み始め、床に亀裂が走る。



「やばやばやばっ! あーし、死んじゃう! 弾けそうっ。 ふざけんな、死ぬ死ぬぅぅうう」



 メイズの断末魔の叫びが木霊した。



「スイレン様、早うこちらへ!」



 天井が崩落する。ツバキがスイレンを抱え上げて狭い室内を逃げ惑った。



「時間との勝負かっ」



 私は近くにある転移門の前にしゃがんだ。



『転移門ノ条件ハ、ドウシマスカ?』



 光に透けたキーボードが現れると、私は社会人として鍛え上げたタイピングスピードで設定を入力していく。



 崩落した天井の一部が身体や頭に当たり血が出るが、避けることもせずにただ集中した。



「魔素ノ源泉ヲ常ニ最大転移っと」



 入力が終わり、転移門を繋ぐ先を確定させたのと同時に、金色の海が室内へ溢れかえる。



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