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30話 初心者冒険者とスキル配布


 次の日、私は家のリビングにシロタ・ミタメル・アルフを呼び出し、作戦会議をすることにした。



「みんなには自分の身を守れるように、レベルアップをしてもらう。冒険者登録を済ませたな?」


「はい。わたしもアルフも冒険者ランクGです」


「冒険者活動楽しみだー!」



 ミタメルとアルフの持つ冒険者タグを確認すると、私は事前に用意した書類を見せる。



「指名手配犯たちから奪ったスキルの中で私が必要ないものだ。これらをみんなに配分したいと思う。いらなければすべてシロタに保管するから、無理に獲得する必要はない」


「ミタメルさん、アルフくん。ご主人様からスキルを貰ったからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。ご主人様の後ろをついていくなら、スキルをもらった程度では足りませんし、有能じゃないといずれお傍にいられなくなりますから」



 ミタメルとアルフはごくりと喉を鳴らした。



「分かりました」


「分かったよ、シロタさん」


「スキルの配分に移るよ」



 書類に書かれているスキルは以下の通りである。



 ユニークスキル

 人形師E


 ノーマルスキル

 剣術A 短剣術C 農業C 裁縫E 



「僕、<農業>はいいかな。ずっと家に籠りきりで花を育てるのすらやったことがないし。だから<剣術>がいい。父ちゃんみたいに強くなって、リリナ様と姉ちゃんを守るんだ!」


「アルフの才能は魔法使いに寄っていて、どちらかというと遠距離型だ。近距離で戦える術を持っていた方が弱点を潰せていいな」



 しかも<剣術>はAランクなので、最初からかなりの強さになる。


 本人が戦うことに積極的ならば、シークレットサービスや警備兵的な立ち位置の仕事を任せてもいいかもしれない。



「あの……わたしは<短剣術>がいいです。短剣ならメイド服の下に隠せますし、元々習得しようか迷っていたので」


「それでしたら、ミタメルさんは<裁縫>も持っていた方がいいのでは? 手先が器用ですし、メイドの職務に合っているスキルですよね」


「<剣術>をアルフに。<短剣術>と<裁縫>はミタメルに渡すか」



 私はスキルをアルフとミタメルに<転移>させる。


 幸いなことにスキルがふたりと相性が良かったので、無事に習得できたようだ。



「<農業>はシロタに渡すか。今も持っているからランクが上がるだろ」



 私がシロタにスキルを移すと、農業Cが農業Aにランクアップした。



「問題はユニークスキル<人形師>だな」



 スキルの説明は以下になる。


 <人形師>

  人形を操るスキル。ランクによって操れる範囲・数が変わる。



 私みたいに<転移>で相手に近づいて剣や槍、魔法で相手を倒すタイプには相性が悪そうなスキルだ。



 ただ強固な素材の人形を用意すれば中距離型の強固な戦力に。普通の人形でも日常業務を賄う単純な労働力となるだろう。


 シロタたちも書類に書かれたスキル効果を見て悩んでいる。



「欲しい人はいるか?」


「うーん。僕はいいです。今あるスキルですら全然使いこなせていないから。<結界魔法><魔弾><剣術>だけで戦闘スキルは十分過ぎます」


「日常業務が楽になるかもしれませんが、わたしは魔力が少ないので……遠慮します」



 アルフとミタメルがそう言うと、シロタは目を輝かせた。



「ボクは<人形師>が欲しいです! <人形師>で<魔物解体>スキルを補助します。肉球だと解体作業が大変そうでしたが、その問題も解決。ついでに戦闘力もアップです!」


「シロタが使うなら、丈夫な人形を作らないとな。ちょうどヘルスコーピオンの皮があるし、それで人形でも作るか」


「ミスリルの針を買っていただけるのでしたら、<裁縫>スキルでわたしが人形を作りますよ」


「ヘルスコーピオンの皮を扱うなら、かなり力が要りそうだけど大丈夫か?」


「スキル<伝説の家政婦>で<怪力>も習得すれば問題ありません。家事も掃除も料理も力仕事なので無駄にはなりませんよ」


「ミタメルさん、ありがとうございます!」


「じゃあ、<人形師>はシロタに渡すということで。一回、みんなのスキルを確認するね」



 私は<鑑定>を発動し、3人のスキルを確認する。




*********



名前:シロタ

性別:無性

年齢:110歳

種族:無の精霊


レベル:14

HP:294/294

MP:280/280


筋力:28

攻撃:28

防御:70

知力:70

素早さ:14

幸運:14


ユニークスキル

人形師E


ノーマルスキル

毒耐性C 毒の牙F 料理D 農業A 


魔物解体F 釣り人B






名前:ミタメル


種族:人族


ユニークスキル

伝説の家政婦



ノーマルスキル

料理A 洗濯A 掃除A 忠誠心


短剣術C 裁縫E





名前:アルフ


種族:人族


ユニークスキル

結界魔法E アイテムボックス


ノーマルスキル

魔弾S 計算G 忠誠心 剣術A



 

*********



「……なんか<忠誠心>ってスキルがミタメルとアルフにあるんだけど」


「わたしたちのリリナ様への想いの証です。自然と芽生えたスキルですよ」


「リリナ様ばんざーい!」



 ミタメルとアルフは誇らしそうな表情を浮かべる。


 わたしはシロタに視線を移す。



「なんでシロタには芽生えない」


「そんな簡単にスキルが芽生える方がおかしいんですよ! スキルがないからといって、ご主人様に従わない訳ではありませんからね!」


「はいはい」



 元々、このふてぶてしいタヌキに忠誠心なんて期待していない。



「スキルの配分も終わったことだし、さっそくレベリングに行きますか」



 私は市場で買ってきた初心者用の防具と武器をミタメルとアルフに渡すと、マスカーニの街近くの森に<転移>する。



「今回、受けた依頼は『ゴブリン退治』『オーク退治』『グルーミーラビット退治』『薬草採集』だな。今はGランクだから、一つ上のFランクの依頼しか受けられなかった」



 森を散策していると、すぐに魔物の気配がした。



「私は薬草採集をしているから、3人で頑張ってー。相手はゴブリンだし、大丈夫っしょ」



 自分に<気配遮断>と<透明化>をかけて、近くの草むらへ向かう。



「いや、スパルタが過ぎますよ。ご主人様ぁぁぁああ!」



 シロタの叫び声が聞こえたが無視をする。


 もちろん、ミタメルとアルフが危なくなったら助けに入るつもりだ。



「だけど、あの強力なスキルを持っていてゴブリンに負けるってことはないだろ」



 異世界人で戦闘力を急激に上げたから分かるが、戦いは経験によって強くなる。

 

 私が間に入った方が成長がそがれてしまうだろう。



「スキル<採集>の効果を確かめないとな」



 <鑑定>を使って草むらを見ると、雑草に交じって薬草がちらほらとあった。


 それをスキル<採集>を使って引き抜くと、細かな根の一本すら傷つけずに綺麗に抜けた。かなり高品質なんじゃないだろうか。




「……終わったか?」



 目当ての薬草を積み終わってからシロタたちに会いに行くと、15体のゴブリンの耳を削ぎ落しているところだった。



「リリナ様、もうすぐ討伐証明のゴブリンの耳を切り落とし終わります」



 元気なミタメルと違い、アルフとシロタは息が上がっている。



「ボクが囮役なんて……」


「魔弾は簡単に放てるけど、結界魔法が難しいよ。剣術は当分無理だ。僕に体力はないし」



 私はアイテムボックスから飲み物を取り出すと、アルフとシロタに渡した。



「アルフは結界魔法がもう使えるのか?」


「図書館で調べました!でも、珍しいからか初級の『バリア』の呪文しか見つかりませんでしたけど」


「手本の人間がいないのに覚えられるなんてすごいじゃないか」


「えへへ」



 魔法に関しては、アルフが抜きんでた才能を持っているな。やはり、魔力異常症が関係しているのだろうか。



「休憩したら、サクサクいくよ」



 今日中にすべての依頼を達成するつもりだからね。



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