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26話 初心者冒険者と指名手配犯の検分


 一週間の指名手配犯狩りの手順は主に2パターンだった。


 まず一つ目。か弱い女旅人のふりをしてアジトに連行してもらい、一気に叩く。盗賊のアジトが定まらないない時や単独犯が潜伏している時などに有効だった。


 次に二つ目。アジトや警備の盗賊を目視で見つけたら、人族のおじさんから奪ったスキル<気配遮断>と<透明化>で潜り込み、一番強そうなヤツを奇襲して倒す。場合によっては毒霧を撒いたり。楽に戦闘が終わるので良かった。


 そんこんなで指名手配犯狩りは一週間続けられ、捕まえた盗賊――――首を含めて――――が丁度100になったところで終わりにした。



「こいつ等がいなけらばもう少し稼げたんだけど」



 私がちらりと縄で拘束された指名手配犯たちを見ると、彼らはビクリと身体を震わせた。


 指名手配犯狩りを始めたばかりのときは、みんな命懸けで抵抗してきたので命のやり取りをしていたが、後半はどこで情報が漏れたのか降伏してくる犯罪者が多かった。



「まったく、これだけ多いと管理も大変だな」



 縄で縛られた指名手配犯たちの顔には、指名手配書の番号が油性マジックで書かれている。


 もちろん首だけになった指名手配犯にも番号は書いた。後で確認をとられても、誰をどこで倒したかなんて覚えてられないからね。


 持ってて良かった日本の文房具。


 ちなみに指名手配犯狩りでレベルは1しか上がっていない。けれど、スキルは以下のように増えた。



*********



▶新規獲得スキル


 ノーマルスキル

 魅了耐性E 細工士E 薬師B 斧術C 

 隠蔽C 水魔法E 採集B 採掘G

 騎乗D 味覚G



▶スキルの重複及び戦闘でレベルアップしたスキル

 体術B→A

 魔物使いE→C

 カリスマF→E

 槍術D→S

 気配遮断G→F

 透明化E→D

 視力D→B

 火魔法D→B

 転移C→B


▶条件をクリアし複合したスキル

 火魔法B・水魔法E・土魔法B・風魔法A → ユニークスキル<四属性魔法C>


 聴力B・嗅覚E・視力B・味覚G・直感A → ユニークスキル<超感覚D>


 槍術S・棍棒術A → ユニークスキル<槍聖>



▶いらないスキル(シロタ行き)

 ユニークスキル

 人形師E


 ノーマルスキル

 剣術A 短剣術C 農業C 裁縫E  




<騎乗>

 あらゆる生物を乗りこなす才能。


<隠蔽>

 自分のステータスや書類などを偽装できる。ただし、自分よりもレベルや解析系スキルが上だと見破られる。


<細工士>

 細かい工芸品や細工を施せる才能。


<薬師>

 あらゆる調薬を可能にする才能。




*********



 

 盗賊の中には騎士崩れのヤツもいたようで、<剣術>や<槍術>を持っているのが多かった。


 集団の下っ端はスキルが0か1個しかない者もいて、100人倒した割には成果として少ない気がする。

 

 ただまあ……財宝の方はザックザクでして。



「グフフッ。こんだけ財宝があれば、会社設立資金としては十分だな」


 

 捕まえた犯罪者たちは口に布を嚙ませているので邪魔されることもなく、私はアイテムボックスに入っている財宝の一覧をうっとりと眺めた。



「……さて、ゆっくりとお風呂にも入りたいし、マスカーニの街に戻りますか!」



 私は指名手配犯たちと一緒に、マスカーニの街の関所に<転移>する。



 一週間ぶりに見た堅牢な関所と訓練された警備兵を確認すると、私は指名手配犯たちと共に入場の列に礼儀正しく並んだ。



 それなのに何故か……関所の兵たちが大騒ぎになった。




「あの……リリナ・ハーチス様。恐れ入りますが……この拘束されている者たちは……その……」



 もごもごと話す警備兵に営業スマイルを向けると、アイテムボックスにしまわれていた指名手配犯の首をすべて地面に置いた。



「ひぃっ」


「全員、指名手配犯です。換金場所は冒険者ギルドでいいんですかね?」


「え、あ、いや……通常はそう、なんですけど……その……あちらに」



 警備兵の視線の先には、エリート受付嬢エイミーと知らない制服を着た女性が一緒に立っていた。


 知らない女性が手を振りながら、鼻息荒く私へと駆け寄ってくる。



「リリナ・ハーチス様ぁぁああ! わたくし、ダヴィーナと申します。マスカーニの街の商業ギルド副マスターをしております。つきましては、ハーチス様がお持ちの物品の買取などをさせていただきたく――――」


「こっちが先です!」



 エイミーがダヴィーナをグイッと引っ張ってどけて、私にいつもの受付嬢スマイルを浮かべた。



「あちらで指名手配犯の検分を行います。少し時間がかかりますので、ハーチス様は女性警備兵用の浴室で疲れを癒してください」


「治安維持貢献のお礼に豪華な食事を、わたくしの商業ギルドがご用意してますわぁぁあああ!」



 今度はダヴィーナがエイミーを押しのけて叫んだ。



「タダならありがたく頂戴します」



 私は女性警備兵に案内されて、関所の中に入る。後ろでエイミーとダヴィーナが言い争いをしているが、関わると面倒そうなので、喧嘩するほど仲がいいという名目で無視させていただいた。



 石鹸で髪と身体を洗ってスッキリした私は、商業ギルドが用意した豪勢な肉料理に舌鼓を打つ。


 すると、脳内に祝音が響く。



*********





▶スキル<悪食>の効果により、オーク肉から<HP回復E><性豪A>のスキルを抽出しました。



<HP回復E>

 戦闘中、減ったHPを自動回復させる。


<性豪B>

 ……アレの持続力が……ね。




*********





 なんかスキルが増えたな。<HP回復E>は有用だけど、もう一つはいらない……が、シロタに押し付けたところで、またオーク肉を食べたらスキルを獲得してしまいそうだ。



「<悪食>は本来は有用なスキルなんだろうけど、変な物をもらいそうで扱いづらいな」



 私は肉料理を食べきると、食後の紅茶を飲んだ。まるで外国産の高級紅茶のような芳醇な香りと味で少し驚く。


 これもまた、過去の勇者たちの残した功績なのだろう。



「ハーチス様、指名手配犯の検分が終了しました」



 私はエイミーに案内されて、面会室のような場所に通される。そこには二十代後半ぐらいの茶髪に赤メッシュの入った青年がいた。


 顔立ちはイケメンの部類にはいるだろう。ただ東洋人的な雰囲気を感じる。


 まあ、この街にも少ないがそんな顔立ちの人はいたのでこの世界の人間だろう。



「初めまして、リリナ君。私の名前はトーリ・アヤガスミ。冒険者ギルドマスカーニ支部のギルドマスターさ」


「初めまして」



 軽く挨拶すると、トーリと握手をして向かい合って席に着く。



「君ってば、依頼をこなしていないのにすごい活躍だね。おかげで出張先からとんぼ返りさ」


「申し訳ございません」


「ああ、嫌味とかではないんだよ。将来有望な冒険者がマスカーニの街に生まれてとても嬉しいんだ」



 ……本当に嬉しそうだな。



 私の対応なんてただの仕事の一環だろうに、トーリは親しい家族や友人へ向けるような笑みを私に向けてきた。



「早いとこ、説明をしなくてはね。エイミー」


「はい。ハーチス様が指名手配犯書番号を書いていただいたので、検分が早く終わりました。指名手配犯数100。その内、死亡が77。生け捕りが23。生け捕りの内、死刑対象が3。残り20が鉱山送りとなっております」



 エイミーは指名手配犯の詳細が描かれた書類を私に渡した。



「国から出る賞金が金貨43,000枚と高額になりますので、申し訳ございませんが大金貨と白金貨で後日払わせていただきます」



 日本円で4億3千万円か。かなりの高額だな。



「特にロベリア王国を追放された騎士崩れたちを捕まえてくれて感謝するよ。専門的な戦闘訓練を積んでいるから、一般人だけじゃなく冒険者にも被害が出ていてね」


「いいえ、とんでもない。私にとっても利になる経験でした」



 スキルおいしかったしな。



「あの、ギルドマスター。買取の件は……」


「バレちゃっているし、商業ギルドと一緒に話さないとダメだよ。あちらとは持ちつ持たれつだからね。リリナ君と冒険者ランク昇格の話をしたいから……エイミー、少しだけ席を外してくれるかい?」


「かしこまりました。商業ギルドが邪魔しないように押さえておきます」



 エイミーはお辞儀をすると、静かに部屋から出て行った。



「あの子は、僕がリリナ君に戦利品と魔物の素材の買取をさり気なく冒険者ギルドの有利になるよう誘導すると思っているね」



 歳の近い成人女性に対して、『あの子』は不適切な表現な気がするが。


 私が訝しんでいると、トーリはいたずらっ子のように笑った。



「ねえ、リリナ君。日本のお札に描かれている偉人の名前は分かるかな。1万円札は渋沢栄一、5千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎だよね」



 私は驚きで目を見開き、答える。



「いや、誰それ。1万円札は甘谷豊太郎、5千円札は岩畑百合絵、千円札は南原竹次でしょ」





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