表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/58

24話 初心者冒険者とオータム姉弟


「アルフ! 今、魔力抑制剤を……」



 ミタメルは私があげた魔力抑制剤を取り出し、弟のアルフに飲ませた。しかし、一向に良くならない。



「どうして……なんで……」



 ミタメルは涙を流し、アルフの手を握ることしかできない。


 私は魔力抑制剤を買った時に見た<鑑定>の結果を思い出す。






*********



魔力抑制剤


飲むと10000MP減らす。24時間経過しないと次に同じものを飲んでも効果がでない。

副作用に頭痛・熱・倦怠感・内臓機能の低下がある。


 


*********





 生存率2割以下というのは本当のようだ。


 身体機能が未熟で魔力回復が多い子どもは、この薬だとすぐに死んでしまうだろう。



「本当は治験とかやってからやりたかったんだけど」


「……ご主人様?」



 私はアルフに近づくと、口元に指先を添える。


 バジリスクから奪った<毒魔法>の中には、ビジネスに有用そうな魔法があった。バジリスクはひたすら強力な猛毒を作っていたが、私は違う。


 ……脳内に魔法の効果をイメージ、魔力を指先に集中。



毒生成ポイズンクラフト



 たらりと指先から薄水色の液体が垂れる。この魔法で私はオリジナルの毒を作った。




*********




魔力抑制


飲むと24時間MPが30%より増えなくなる。 




*********




 流通している魔力抑制剤が粗悪品だったからか、毒だからこそ薬ほどに生成の難易度が高くなかったのか、そもそも毒でマイナス要素しかないからか、魔力抑制剤のような副作用はない。


 しかも材料費なし。コスパ最強。



「ご主人様、アルフくんの顔色が良くなっていますよ! 熱も下がっています」



 シロタが肉球をアルフの頬に当てながら言った。



「ぶっつけ本番だったけど効いたみたいだな」


「あの……リリナ様……」


「これからは病気を気にしなくていいよ」


「本当に……本当にありがとうござます」



 ミタメルが私の手を握った瞬間、脳内に福音が響く。



*********



▶蜂須莉々菜に畏怖・敬愛・思慕を持つ人数が30名を超えました。


▶スキル<カリスマ>の熟練度がG→Fになりました。


▶蜂須莉々菜の言動に説得力と威圧が付与されるようになります。信者は99%蜂須莉々菜の命令を聞くようになりました。



*********




 

 ……詐欺師かカルトかな。



 スキル<カリスマ>の効果にちょっと引きつつ、私はすぅすぅと眠りにつくアルフを見た。



 一応、確認はしておくか。



 私は<鑑定>を発動させる。





*********




名前:アルフ


種族:人族


ユニークスキル

結界魔法E アイテムボックス


ノーマルスキル

魔弾S 計算G  



<結界魔法E>

 様々な結界を展開できる。結界の種類、範囲、強度はランクに比例する。魔力消費が多い。自分の攻撃は結界に弾かれない。



<魔弾S>

 魔力を銃弾のように射出する。一度に発射できる魔弾の数はランクに比例する。





*********




 あー、うん。無敵戦車かな? 姉に続き弟も逸材すぎる。


 



    ☆




 アルフに魔力抑制毒を飲ませた後、彼を<転移>で丁重に家へと運び、私とシロタとミタメルは夕飯を食べていた。


 ミタメルが作ったパンと具沢山スープと魔物肉のソテーは<料理A>だけあって、異世界に来てから食べた物の中で一番おいしい。



「うまい! うまい! うますぎますぅぅうう!」



 皿に顔を付けてガツガツと食べるシロタはなんとも意地汚い。

 


「ミタメルは自分のスキル<伝説の家政婦>についてどこまで知っている?」


「え、<伝説の家政婦>ですか? スキル鑑定はお金がかかるので、わたしはやったことがないです」



 首を傾げるミタメルに、私は以前<鑑定>したときのスキル効果を説明した。



「衝撃的瞬間に居合わせる確率が極めて高くなるデメリットがある、ですか。もしかすると、わたしのこのスキルは母から遺伝したのかもしれません」



 ミタメルの母は大貴族のメイドをしていて、父は同じ貴族に仕える魔剣士だったそうだ。職場恋愛で結婚し、ミタメルとアルフを産んだ。


 けれど、その後に母親は仕えていた大貴族の重大な秘密を知ってしまい、命を狙われるようになった。


 父親が命と引き換えにミタメルたちを国から脱出させたが、アシュガ帝国に入ったところでアルフが魔力異常症を発病。母親もこの街に着いてすぐに病で亡くなったそうだ。


 それからは蓄えを切り崩して魔力抑制剤を買っていたが底をつき、冒険者ギルドで私に出会ったそうだ。



 ……十代半ばぐらいだろうに、ハードな人生を送っているな。



「私は知られて困る秘密なんてないから。悪事も善行も金儲けもミタメルに隠すつもりはないから安心して」


「はい!」


「いや、ご主人様。悪事はやらない方向で生きていきましょうよ」



 私は紙を取り出すと、アルフのスキルを書いていく。



「アルフもかなり強力なスキルを持っているから、自分が将来どうなりたいのかを今から考えさせておいて。このままだと強力な魔法使いになれそうだけど、剣術を覚えればお父さんみたいな魔剣士になれるかもしれない。戦うのが嫌だったら<計算>もあるし、商会とかで働けるんじゃないか?」


「ありがとうございます。普通は無料で鑑定してもらえませんから……」


「スキル鑑定の相場っていくらなの?」


「平民相手だと金貨20枚からですかね。貴族だと口止め料も払うでしょうから……想像もできないです」



 ミタメルの回答を聞いて、私の頬が緩む。



「儲かるんだ。いいね」


「スキルを中心に鑑定できる人は少ないみたいですね。ステータス値と物品の鑑定が得意な人が多いと聞きます。人が何の鑑定を優先してできるかは神が決める……なんて噂もあります」


「そうなのか」



 私みたいに<鑑定>で何を優先できるか自由に選択できる人は少ないのかもしれない。あの時も神の声が聞こえていたし。



「明日からミタメルに仕事をしてもらうけど、それと同時に<伝説の家政婦>でどんなノーマルスキルを取得するか考えて置いてね」


「分かりました。図書館で調べてみます。リリナ様の明日からのご予定は?」


「一週間でAランク冒険者になる予定だよ」



 やり方は知らないけれど、冒険者ギルドのセオリー通りにやればなんとか飛び級できるっしょ!






莉々菜は冒険者ギルドをなめているが果たして……?



面白いと思っていただけましたら、評価とブックマークをお願い致します。

作者のモチベーションが上がります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ