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2話 逃亡OLは躊躇しない


「いんやぁぁあああ!」



 てっきり1階か2階かと思っていたら、でかい窓の下は地上15階以上の高所だった。


 私は落下しながら体制を立て直し、上空を見る。


 そこには、某テーマパークの城を彷彿とさせるような、立派な白亜の城が建っていた。


 ……このままだと、私は地面に激突して血の花火を盛大に咲かせるだろう。



「一兆円貯めずに死んでやるかよ!」



 私はゴクリと喉を鳴らすと、使い方もよく分からない『力』を叫ぶことにした。



「スキル<転移>!!」



 その瞬間、ぐらりと景色が歪んだ。


 次いで浮遊感がなくなり、辺りが薄闇に包まれた。



「ここは……城の外?」



 今の時間は夜。1キロメートルほど離れた場所に、白亜の城と城壁が見えた。そして、少し離れた場所にある建物が密集した場所から漏れる光のおかげで周囲は目視可能だ。



「とりあえず、スーツを着替えるか」



 辺りに人はおらず、木々が生い茂っている。


 私は鞄から、終電ダッシュするために用意しているヨレヨレのTシャツとジャージに着替え、激安スニーカーを履いた。


 レザーの鞄は目立つ可能性があるので、愛用しているくたびれた布製のエコバックに押し込める。



「マスクと眼鏡も外そうか。あえて、素顔を晒して堂々としていた方が見つからないかも」



 誘拐されて連れてこられた場所が城で、おじさんの頭に王冠が乗っていたということは、おそらく犯人たちは王族だ。


 ならば、逃走した私を捜索するだろう。運が悪ければ、私の方を犯罪者にするに違いない。



「人が来ないうちにもう一度確認するか。ステータスオープン」



 私の眼前に数値が表示される。




*********




名前: 蜂須 莉々菜

性別:女

年齢:22歳

種族:異世界人


レベル:1

HP:150/150

MP:90/100


筋力:15

攻撃:20

防御:5

知力:8

素早さ:10

幸運:3


レジェンドスキル

勇者G


ユニークスキル

転移G


ノーマルスキル



*********






「レトロゲームみたいなステータスだな」



 色々と突っ込みたいことはあるが、今は時間がない。私はスキルを確認できないかと思い、画面をタップした。





*********




 レジェンドスキル <勇者G>

 取得経験値2倍。自分も含めた同じパーティーの2人に××特攻を付与


 ユニークスキルスキル<転移G>

 MPを使用し、最大1キロメートルまでなら自由に自分を転移させることができる。



*********




「なんで私に勇者のスキルが付いているのか分からないけれど、便利そうだからいいか。ゲームをプレイした経験はあまりないけれど、経験値2倍はめちゃくちゃ美味しいよね」



 使えるものはなんでも使う。それが私のポリシーだ。



「転移一回につき、MP10消費。連続で使用すれば、最大あと9キロメートル離れることができるか」



 高校生たちの前で伊賀忍者のふりをしたことによって、私のスキルを誤認させることができたかもしれない。



 私が突然消えたのも忍術的な高速移動や変わり身の術的なものであり、どんなスキルを所持しているか不明……という感じがベストだ。


 転移のスキル持ちだと確定されると、私の逃走が難しくなるので。



「まあ、ここがスキルでなんでもありな世界だとすると、私のことを特定されている可能性もあるけど。忍者のフリも面白かったしいいか」



 私が気持ちを切り替えて背伸びしていると、末端の兵士っぽい恰好の人がぞろぞろと城の方角から出てくるのが見える。


 ちなみに私の視力は2.0以上なので、彼らはまだこちらに気づいていない。



「スキル<転移>」



 私は5回ほど<転移>を使用した。白亜の城はもう、豆粒ほどにしか見えない。



「ここは王都とか城下街ってところかな」



 周りは店やレンガ造りの住居が並んでいる。兵士たち……というか、夜だからか人も開いている店も少ない。



「ずっと同じ方向に転移していればいつか国を出れるだろうけど、MPは使い切りたくないな……」



 考え事をしていると、不意に後ろから人の気配がした。



「よぉ、姉ちゃん。こんな夜遅くに出歩いているなんて、不用心なんじゃないかぁ?」


「持っているもの全部よこせや」


「そうだ! そうだ!」



 そこには、いかにもなチンピラ男が3人いた。


 髪の色はそれぞれ赤・青・黄色と信号機のようだ。



「ひっ、命だけはどうか……」



 私は涙目で懇願する。気分は舞台役者だ。



「ちょっとこっちで楽しもうかぁ」


「荷物剥いだら女も売り飛ばしましょうや」


「げへへ! げへへ!」



 腕を掴まれ、路地裏へと強引に連れていかれる。



 私は終始怯えた表情を浮かべ――――チンピラの上に転移した。



「おらぁああ!」



 重力を味方につけ、えげつない勢いで二人の男に片足ずつかかと落とし食らわせ、最後の一人は鞄で後頭部をぶん殴った。


 自分でも称賛したくなるような迷いない動きだ。



「「「ぐへっ」」」


「これは正当防衛だから。恨むのは筋違いだよー」



 気絶し地べたに這いつくばるチンピラたちを見下ろし、私はニタリと笑みを浮かべる。




*********



 ▶レベル2になりました。


 ▶スキル<転移>の熟練度がG→Fになりました。


 スキル<転移>

 MPを使用し、最大10キロメートルまでなら他人と自分と物を転移させることができるようになりました。



*********

 



「さて、お楽しみの装備品剝ぎ取りタイムといきますか!」



 なんか頭に声が響いたけれど、それよりも優先することが他にある。


 


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