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10話 逃亡OLと毒蛇の谷の異常

「毒を持っている蛇の魔物をいっぱい殺したいんだけど、どこにいるのか知らない?」


「ポイズンスネイクのことですか? 確か近くに毒蛇どくじゃの谷と呼ばれる生息地がありますが、あの場所は冒険者も賊も近寄らない場所ですよ」


「どうして?」


「ポイズンスネイクが溢れるほどいるんです。誰だって毒は怖いですよ」


「他人に毒殺される前に、自分で毒に慣れていた方が断然いいでしょ」


「どんだけ修羅の国で育ったんですか……」


「元の世界では治安が良くて有名な国、日本出身ですけど?」




 まあ、すでに私は毒耐性スキルを獲得しているので、相当な猛毒でないかぎり大丈夫だろう。



「ええー、ボク行きたくないです。本気でか弱いんで」


「なぁに、シロタ。もしかして自分に選択権があると思っているの?」


「申し訳ございません!」



 私が地図を広げると、シロタが目的地に肉球を添える。



「ここが毒蛇の谷がある場所です」


「この亀裂の絵がそうか」



 自分がいる場所がおおよそしか分からないが、東に何十キロかいけば見つかりそうだ。



「そういえば、魔法ってどうやって使うか分かる? 火と風の魔法スキルは持っているんだけど、上手く発動しなかったんだ」


「すでに二属性も奪っているなんて、さすがはご主人様。短い間にエグい人生経験していますね」



 シロタは少し引いた声音で言うと、地面に降り立った。



「魔法の発動には、術者の詠唱、魔力、魔法のイメージ、適正属性スキルの保有。この四つが必要です」



 シロタは器用に枝を持って、地面にスルスルとこの世界の文字を書く。


 何故か私もその文字を読めてしまうが、今は後回しだ。



「たとえば、火魔法の基本である『ファイヤーボール』は火の玉を発射する魔法です。意味も分からず聞き取れなかったとは思いますが……」


「いやいや馬鹿にしないで。『ファイヤーボール』ぐらい小学生でも分かるから」


「初めて聞いたのに音が理解できたのですか!? 言葉とはかけ離れた発音だと思うのですが……」



 シロタの真面目な顔を見るに、ふざけている訳ではなさそうだ。

 


「この世界に来てから、言葉に不自由したことがないし……召喚特典か何かで言語翻訳機能が搭載されたっぽいな」



 レベルアップ、スキルなど、この世界に来てからというもの、私の身体は地球では考えられないようなスペックになっている。


 ならば、この世界に適用できる身体に作り替えられている可能性がある。簡単に言えば改造人間になっているということだ。


 まあ、たとえ身体がいじられていようとも、言葉に苦労しないのはありがたい。



「なるほど。過去の異世界から来た勇者たちの逸話とかを聞くと、数多の魔法を使いこなす……なんて割と普通のことですから。ご主人様と同じ状況だったのでしょう」



 シロタは頑張って賢そうに咳払いをする。



「それでは続きを話しますね。魔法を発動する際は、どのような魔法効果があるのか頭の中で具体的にイメージする必要があります。そしてそのイメージには、世界に決められた適切な詠唱が必要です。この二つは表裏一体ですね」


「新しい魔法を創るにしても、イメージだけではダメってことか。私みたいな言語翻訳ができない状態で詠唱を見つけるのって大変そうだな」


「そうですね。新しい魔法は、1000年に一回生まれるかどうか。異世界出身の勇者が現れた時代に増えることが多い……と聞いたことはあります」


「異世界人ならゲームとかの知識があれば割といけるか」



 それにしても、異世界人優遇が過ぎるんじゃなかろうか。



「次に魔力ですが、これは単純に魔法発動に必要なエネルギーですね。魔法イメージや詠唱が拙いと、発動時の必要魔力量が増えます。あとは単純に効果範囲や威力が大きい魔法を使っても同じです。小さいサイズファイヤーボールより、大きいサイズのファイヤーボールの方が必要魔力量が多い。自然な法則です」



 詠唱とイメージが完璧であれば、効率的な戦闘ができる。ということは、単純に魔力量が多ければ戦いに有利という訳ではなさそうだ。



「適正属性スキルの保有はそのままの意味です。火魔法のスキルしか持っていない者は、水魔法は使えない。単純に扱う才能がないということです」


「なるほどねぇ」


「以上を踏まえまして、人は魔法を覚える際には魔導書を使って詠唱を覚え、魔法を習得している人に実演してもらってイメージを固めてひたすら反復練習。というのが一般的のようです」


「とりあえず国を出たら魔導書を買い込むか」


「結構お高いですよーう」



 心配するシロタに向けて、私は片手でお金のポーズをとる。



「むっふふ。盗賊から奪った軍資金様はそれなりにある。しっかり経済を回さなとなぁ」


「ボクは美味しいものが食べたいです、ご主人様!」



 シロタは犬のように尻尾を振りながら上目遣いをする。抜け目ない奴め。



「じゃあ、しっかり私のために働かないとね」



 私は微笑みを浮かべると転移スキルを発動した。


 その瞬間、目の前が開けて雲一つない青空が広がる。



「思った通り、空から探す方が楽だな」


「ちょとちょとちょっと、ご主人様ぁぁああ!?」



 森の中ではひしめく木々のせいで、方向感覚すら危うくなる。


 私は新鮮な空気を吸い込みながら、周囲を見渡すと数十キロ先に灰色の禿山になっている場所が見えた。



「あの辺りか」


「いやいやいやいやっ、落ちてる落ちてる落ちてるぅぅうう!」



 浮いているシロタを片手で掴むと、私は禿山の麓に転移した。


 そこには植物一つ生えておらず、青紫色の川が流れている。また、少なくない数のポイズンスネイクが水流に沿って泳いでいた。



「毒蛇の谷はこの先か? 青紫色の川なんて初めて見た。さすが異世界」



 私が関心していると、シロタが震えだした。



「ここは危険です、ご主人様。今すぐ逃げなくては。環境を……魔素をここまで毒が破壊しつくしているなんて、聞いたことがありません。ポイズンスネイク以外の生命体がすべて消え去っています……」


「ポイズンスネイク大量発生ってこと? ラッキーじゃん」


「ボクの話聞いてましたか!?」



 え、ポ●モンだったら最高でしょ。素材と経験値が取り放題だ。





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― 新着の感想 ―
それ、ポ●モンと違う、モ●ハンや! ポケ●ンは素材の剥ぎ取りしないから! 『ピカチ●ウの尻尾を10個納品』とか、チミッ子たちが泣いちゃう……いや、嬉々としてチョン切るな、うん。
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