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まさか、ワトフォード公爵家のご子息を2人とも落とし……?


 その話のあと?



 

 ビトに言われ、2人で出かけた馬車の中での会話を思い出す。

 エリーゼの代わりに結婚してもらうって言われたあと、何があったか──。


 

「あ」


 

 その内容を思い出した瞬間、思わずそんな声が漏れてしまった。できるだけ思い出したくなかった、私の黒歴史のような失態。

 ビトが話を聞こうと私を見ているけど、何も言うことができない。



 

 イベントが発生して、その中の最悪の答えを怒鳴るように言っちゃって、馬車から飛び降りようとして止められて、馬車の天井に頭をぶつけた……なんて、いくらビトにでも言いたくないし言えないっ!



 

 たしかに、あのあと伝説のセリフでもある「おもしれー女」と言われた。

 エリオットの態度が変わるような何かがあったとしたら、きっとこれのことだろう。


 

「えっと、ちょっといろいろあって、エリオット様に「君はおもしろい女だな」って言われたわ」

 

「おもしろい女?」

 

「ええ。ちょっと……あの……いろいろあって」

 

「…………」

 

 

 何があったか詳しく話したくなくて、ゴニョゴニョと濁してみる。でもビトはその理由を聞いてくることはなく、何やら真剣な顔で考え込んでしまった。

 小さく「それは最高の褒め言葉なのでは?」と呟いた声がかすかに聞こえた。


 

「まさか……」

 

「ビト。何かわかったの?」

 

「いえ……。さすがに、エリオット様に限ってそんなことはないかと……」

 

「? なんの話?」


 

 なぜかビトは私の質問には答えず、ジィッと恨めしそうな目を向けてきた。

 なんとなく、品定めをされているような気がする。



 

 な、何?



 

「フェリシー様……まさか、ワトフォード公爵家のご子息を2人とも落とし……」


 

 そこまで言うと、ビトは言葉を止めて黙ってしまった。

 なんとも不穏すぎるセリフの終わりに、慌てて続きを促す。


 

「え? ちょっと、何? 2人とも、なんだって言うの?」


「いえ。それ以上はちょっと」

 

「何それ!?」



 

 なんなの!? 最後まで言ってよ!



 

 中途半端に言うなら意味深な発言はやめてほしい。

 ビトは鋭いし考えが合っていそうな分、余計に気になってしまう。でも、私が問い詰めたところでビトは素直に教えてくれないだろう。

 今も棒読みで「あ、そうだ」なんて言って話をそらそうとしている。


 

「話を戻しませんと。フェリシー様も一緒にルーカス様に会うんですから」

 

「!」



 

 そうだったぁ! 衝撃的な話の連続で、すっかり忘れてた!

 私のことエリーゼだと思ってるルーカスに、私はどんな立場で会えばいいの? 

 ……っていうか、待って。ということは、そもそもルーカスは今日私と婚約するつもりで、私に会いに来ようとしてる……ってこと?



 

 私をエリーゼだと勘違いしているのなら、そういうことになる。

 それを知ったルーカスがどう思ったかはわからないけど、今、彼の中では私が婚約者という立場になっているのだ。


 


 待って。それは……!



 

 カアアッと自分の顔が赤くなったのがわかる。

 顔も体も、一気に体温が上がったようですごく熱い。でも、こんな興奮状態になるのも無理はない。

 だって推しが婚約の挨拶をしに私に会いにくるなんて、そんなの夢小説みたいだ。



 

 ああああ……えぐい! それはたまらない! なんて神展開! 

 まあ、私は偽物だから本当に婚約するわけじゃないし、すぐ誤解は解かれるけど!



 

 推しのルーカスに悶えている場合じゃないってことはわかっているけど、少しくらいは幸せな妄想の中に逃避させてほしい。

 そうでないと、頭がパンクして気を失ってしまいそうだ。

 妄想に浸りながらも、エリオットはどんなふうに私をルーカスに説明する気なのかと考えながら、ひとまず身支度を始めた。

 



 





 

「エリーゼはすでに部屋に向かっている。我々も向かおうか、フェリシー」

 

「……はい?」


 

 ビトに言われた時間に執務室を訪ねると、部屋から出てきたエリオットに開口一番そう言われた。

 私のポカンとした様子も間抜けな返事も無視して、エリオットはスタスタと歩き出す。



 

 いや。ちょっと待って!

 その前に話し合うことがあるんじゃないの!?



 

 この部屋に来るまで、私は胸がはち切れそうなほど緊張していた。

 私の正体がルーカスにバレてしまっていたことに対して、今になって怒られるのではないか──。

 どういった関係者として私をルーカスに紹介するつもりなのか──。

 それをエリオットと話し合うのかと考えるだけで、吐きそうだった。でも、エリオットは作り笑顔のままなんの説明もなく歩き出してしまった。



 

 え。このままルーカスとエリーゼがいる部屋に向かうの?

 いやいや。その前に話し合わなきゃいけないことが……あっ。部屋の前に着いてから話すのかな?

 でも、それじゃ会話が中に聞こえちゃうかも……。



 

 心の中でブツブツ言いながら早歩きでついて行くと、入ったことのない部屋の前でエリオットはピタッと足を止めた。


 

「この部屋だ。きっと2人は混乱しているだろうから、俺だけ先に入る。フェリシーは俺が呼んだら入ってきてくれ」

 

「え? いえ。あの……」


 

 ガチャ! バタン!


 

「話し……合いは……」


 

 私の言葉を最後まで聞かないまま、エリオットはエリーゼたちのいる部屋に入っていってしまった。

 中から、「遅れてすみません。ルーカス様」という声が聞こえてくる。



 

 えええええ!?

 ほんっとうに何も説明ないまま行っちゃったんだけど!? 嘘でしょ!?


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