溺愛ルートになって初めてのイベント
『【イベント発生】本音の確認
どう答えますか?
①「好きです」と言う
②「嫌いです」と言う
③「なんとも思っていません」と言う』
なんでイベントが!?
次はディランの番じゃないのに!!!
今まで、イベントは順番通りに発生していた。
会ったらすぐイベントが発生するレオンは別として、最初はディラン、次はエリオット、その次はビトだった。
この前エリオットのイベントがあったから、次はビトのイベントのはずなのだ。
なんでまたディラン!? ルート変更したから、それもズレちゃったってこと!?
っていうか、この質問は何? 「今でも俺のことが嫌いか?」なんて、めちゃくちゃ恋愛ゲームっぽい質問!
溺愛ルートだから?
もしこれが普通の恋愛ゲームの場合、ディランのような単純明快な男には①が正解なことが多い。
素直に受け取りすぎて、②や③ではそのまま好感度が下がってしまうのだ。
でも、①を選ぶということは、ディランに向かって「好きです」と言わなければいけない。なんとも難しい選択肢だ。
どうしよう……っ! 好きって言うのはちょっと、さすがに……。
でも他の答えもよくないよね? ここは、選択肢にない答えを言うべき!?
そんなことを言われても、私は前世でもあまり恋愛経験がない。
こんな駆け引きのようなやり取りをしたことがないので、どう答えていいのかわからない。
「えっと……」
「……やっぱり嫌いだよな」
苦々しい顔でハッと息を吐き出してから、そっと目をそらすディラン。
早く答えないと、それはそれで好感度が下がりそうだ。
あああ……まずい!!
せっかくディランと普通に話せる関係になれそうだったのに、ここで嫌われるわけにはいかないっ!
「嫌ってなんかいません!」
「……え」
「正直、最初はディラン様のことを怖いと思っていました。でも……素敵なドレスを用意してくださったり、私なんかに謝ってくださったり、エリーゼ様のことを大切にされていたり……そんなディラン様を、今は怖いと思いません」
「…………」
この答えで、どうかな?
一応、本当の気持ちなんだけど……。
ディランは真顔で私の答えを聞いていたと思ったら、突然カアアアッと顔を真っ赤にした。緩んでいた口元を隠すように、自分の手で覆っている。
もう好感度を確認することはできないけど、この答えが不正解ではなかったことだけはわかる。
嬉し……そう? 大丈夫かな?
気がつけば、イベントの表示は消えていた。
これで好感度がどう変化したのか、見られないのが残念だ。
好感度100%になって結婚エンドになっても困るけど、このクソゲーはそんな一気に上がるはずないし。
好感度を上げすぎず下げすぎず、今の穏やかな関係のままこのゲームを終わらせたい!
「そ、そうか。なら……いい。邪魔したな」
「いえ……」
そう搾り出すように言うなり、ディランはどこかオドオドしたまま自分の部屋に戻っていった。
何事もなく終わったことに安心して、ドッと疲れが出る。
ビトにエリーゼにディラン。順番に人が訪ねてきて驚いたけど、これでやっと落ち着けそうだ。
「ふぅ……」
ビトの付き人継続に、仲良くなれたエリーゼ。それに、あのディランとの関係も良好になって、いい方向に進んでる……よね?
エリオットが言ってた『やってもらいたいこと』っていうのが気になるけど、ルート変更してからこんなにいい感じになってるんだし……きっと変なことじゃないよね?
「ルカ様が来るっ!?」
エリーゼが家に戻った2日後。ビトからの突然の報告に、私はまた大声を出してしまった。
そんな慌てふためく私を冷めた目で見ながら、ビトはいつも通り淡々と会話を続ける。
「はい。本日、エリーゼ様に会いに来るそうです」
「エリーゼに? ……そうなんだ」
エリーゼ指名で来るってことは、もう確実に自分の婚約者がエリーゼだと知ったってことだよね?
じゃあ、本当に2人の婚約は話が進んでるんだ……。
疑っていたわけではないけど、あの人を試すのが大好きなエリオットなら、エリーゼやディランの反応を楽しむためにわざとあのタイミングで言ったのではないか……と少し思っていたのだ。
ルーカス側も動き出したなら、間違いないのだろう。
エリーゼが婚約者だって聞いて、挨拶に来たいって言い出したのかな? ってことは、ルーカスもその話を聞いたのは最近?
……というか、それで即自分の婚約者に挨拶しに来るなんて、さすが真面目で誠実な私の推し!!!
外見も中身も本当に素敵!! どうしたらこのクソゲーの世界であんな素晴らしい人が……。
「…………あれ?」
誇らしい気持ちのはずなのに、なぜか以前のように心からときめいていない自分に気づく。
キュンとして大興奮するはずの心が、今日はポッカリ穴が空いたようにスカスカになっている。
なんだろう?
大好きな推しのことを考えてるのに、なんでちょっとモヤモヤするんだろう……?




