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エリーゼが本当に言いたいこととは?


「…………」

 


 なんとも気まずい空気が流れているけど、どちらも口を開くことができない。

 私はエリーゼの様子をジッと見ているけど、エリーゼは私から視線をそらして困った表情をしている。



 

 そんな自分勝手なお願いなんてできるわけない……とか考えてそう。



 

 改めてエリーゼの優しさを感じつつ、私の脳内では緊急会議が開かれていた。エリーゼのこのお願いに対して、私はどうするべきなのか? という議題だ。

 ルーカス推しの私が、キャンキャン叫んでいる。


 

『やりますって自分から言いなよ! あのルーカスと結婚できるんだよ!? 推しとの結婚なんて、こんな幸せが他にある!? ないよね!?』


 

 理性的な私が、冷静にそれに答える。


 

『推しはあくまで推しであって、結婚する相手としてはまた別の話でしょ? そこはちゃんと分けて考えないと』

 

『はあ!? 推しとの結婚なんて、大金叩いてでもしたいに決まってるでしょうが!』


 

 そんな2人の言い合いに、心配性の私が口を挟む。


 

『でも、それってエリーゼの身代わりとして一生過ごすってことだよね……? エリーゼの名前も奪うことになるし、何よりルーカスを騙すことになるんじゃ……』

 

『推しを、騙す!?』


 

 ルーカス推しの私が黙ったところで、楽天家の私が話に入ってくる。


 

『でもさぁ〜、これでルーカスと結婚したらこのゲームも終わりじゃん? もう怖いイベントとかやらずに済むし、この家からも出られるし、ハッピーハッピーじゃない?』

 

『本当に終わるかどうかわからないわよ。溺愛ルートの攻略対象者たちが、ヒロインの結婚を邪魔するために動き出すかも』

 

『も〜、理性的な私は考えすぎだって!』

 

『でも……もし本当にそのせいで変な展開に進んじゃったら……』

 


「フェリシー」


 

 ハッ!

 そこまで会議が進んだところで、エリーゼに名前を呼ばれて我に返る。

 考えはまとまっていないけど、あとあと後悔するのは嫌だし今はまだ自分から動かないほうがいい気がする。



 

 エリーゼから言われるまで、私は何もしなくていいよね?



 

「……何? エリーゼ」

 

「あのね、その……1つ、確認したいことがあるの」



 

 えっ? もしかして、言われる?



 

「フェリシーが孤児院に来たとき、一緒にいた人……あなたの付き人って本当?」



 

 ……ん?



 

 さっきまでの会話とかけ離れた質問に、一瞬だけポカンとしてしまう。

 なんで急にビトの話を? と不思議に思いつつ、とりあえず答える。



「ビトのこと?」


「……名前は知らないのだけど、眼帯をつけてる人」

 

「うん。私の付き人よ。ビトって名前なの。それがどうかした?」

 

「……あの方って、騎士の方よね? どうしてフェリシーの付き人になったの?」

 

「それは……」



 

 エリオットに何か欲しいものはないか? って聞かれて、孤児院を一緒に回ってくれる人がほしかったからなんだけど……そこまで詳しく言う必要はないよね?



 

「私がお願いしたんです」

 

「フェリシーがお願いした? あの方、ヴェルド家の方って聞いたけど……怖くないの?」

 

「!」



 ヴェルド家──この世界では、処刑人として忌み嫌われている家系だ。

 その家系の者特有であるオッドアイを隠すために、ビトは左目に眼帯をしている。



 

 ビトの名前は知らないのに、ヴェルド家ってことは知ってるんだ……。

 もしかして、エリーゼも偏見持ってるのかな?



 

 性格がいいとか悪いとか関係なく、この世界ではみんな処刑人の家系に対して偏見を持っているのが普通なのかもしれない。

 エリーゼの瞳から伝わってくるのが、嫌悪ではなく心配の色であることがまだ救いだ。



 

 私のこと、心配してくれてるのかな?



 

「大丈夫よ。ビトは(ちょっと性格に難ありで歪んでる部分もあるけど)優しいし、なんでも相談できる相手で(攻略対象者の中では)1番信頼している人なの」

 

「……そう」


 

 私のかなりオブラートに包みまくった答えを聞いて、エリーゼはポツリとそう呟いた。

 安心してくれると思ったのに、なぜかシュンとして俯いてしまった。



 

 あれ? 落ち込んじゃった? え。なんで?




 何か変なことを言ってしまったのかと不安になったけど、エリーゼはすぐに顔を上げてニコッと笑顔を作った。

 あきらかに無理しているとわかるくらい、不自然な笑顔だ。


 

「急に変なことを聞いてごめんなさい。2人……思っていたよりも仲がいいのね」

 

「え?」

 

「あっ。なんでもないの。本当に! 気にしないで!」


 

 慌ててそう言うなり、エリーゼは突然ソファから立ち上がった。

 顔に不自然な笑顔を貼りつけたまま、ぎこちなく横歩きをしてドアに向かって進んでいる。



 

 なんか……めっちゃ動揺してない!!!?

 どうしたエリーゼ!?



 

 そう思うものの、なんとなく何も聞いてはいけない気がする。

 エリーゼは最後まで変な笑顔を変えることなく「じゃあ、またね」と言って部屋から出ていった。



「……なんだったの?」



 せっかくあのエリーゼと仲良くなれたというのに、最後は変な感じで終わってしまった。

 何かスッキリしないのは、エリーゼは本当に話したいことの半分も口にできなかったのではないか……と思うからだ。



 

 やっぱり私から聞くべきだったのかな?

 いろいろ不安でつい逃げちゃったけど、ちゃんと話をしたほうがよかったのかも……。

 


 

 コンコンコン

 そんなことを考えていると、またまたドアをノックされた。

 



 エリーゼ!?



 

 また戻ってきたのかと思い、「エリーゼッ!?」と声を上げながらドアを開ける。

 でも、そこに立っていたのはエリーゼではなくディランだった。



 

 え!? ディラン!? なんで!?


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